カンボジア 2012年11月29日

カンボジア、政治の季節へ
フン・セン政権、安泰なのですが……

広がる無関心層

 地方選挙は、今年6月3日に全国で一斉に実施され、即日開票された。地方選挙は5年に1度実施される。全国1633の最小行政区で合計1万1459議席の議員を選ぶもの。議席数を最も多く獲得した最大与党が、行政区長を指名する。投票は比例代表制。

 全国の有権者数は、約920万人。初めて地方選挙が行なわれた2002年の投票率は約87%と高かった。だが、3回目となった今回の地方選挙は、65.03%にまで下がった。実際の政治や行政運営が、与党・人民党に支配されていることから、「無関心層」が広がった、とみられている。

野党得票が3分の1

 選挙が行なわれた全国1633の行政区のうち、人民党が首位となったのは1592。つまり、全国97%の地方行政区で、人民党が最大与党となり、行政区長を指名する権利を得た。この意味では「与党圧勝」に間違いないのだが、各党とも注目したのは得票率だ。今回の選挙での人民党の得票率は約62%。王党派のフンシンペック党は約4%、ノロドムラナリット党は約3%。最大野党のサムレンシー党は約21%、第二野党の人権党は約10%となっている。

 人民党の地方選での得票率の推移を見ると、2002年、2007年、2012年とほぼ変わらず約6割を維持している。だが、この得票率を「与党系」として、連立政権を組んだ王党2派と合算して比較すると、2002年が83%、2007年が74%、そして今回が69%と毎回下がっている。

 一方、野党系の2党(サムレンシー党、人権党)の合計得票率は約31%にのぼり、2002年の17%、2007年の25%から伸びてきている。この結果を受けて、野党系2党は、総選挙に向けて選挙協力をすることを決定、「カンボジア救国党」を立ち上げた。与党批判の受け皿として、どこまで得票を伸ばすのかが注目される。

都市部で弱い与党

 得票をさらに州別に見る。与党・人民党の得票率が50~60%台前半と、比較的低いのは、プノンペン、コンポンチャム、コンポンスプー、シェムリアップ、カンダール、タケオ、プレイベンなど人口が多く、州都の都市化が進む州が多い。これらの州では、開発に伴う強制立ち退き、貧富の格差など都市問題も顕在化しており、野党が支持を得やすいという事情もある。

 もうひとつ、カンボジアならではの事情がある。選挙モニターを実施するNGO、COMFRELによると、今回の地方選挙でも「投票所に村長ら地域の有力者が張り付いており、投票行動を監視されていた」との報告が多数あったという。顔見知りの有力者ににらまれれば、秘密投票とはいえ、個人の意思で票を投じることは難しい。その点、人間関係が農村部より希薄な都市部では、より個人の意思が投票に反映されやすい、ということもいえる。

2008年の総選挙で選挙運動を繰り広げる野党・サムレンシー党の運動員=プノンペンで【撮影/木村文】

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