それでも喜びに沸く開成OB
政・官を同窓会でつないだのは岸田氏

 それでも唯一沸いているのが、開成高校出身者たちと、岸田首相と縁の深い財務省である。

 岸田政権に「開成高」人脈(日本経済新聞電子版10月2日付)

 開成高校OB初の首相へ悲願達成!男子御三家のラスト(日刊スポーツウェブサイト9月29日)

 他に話題はないのかと思うほど、各紙が新首相と開成高校を結びつけた記事を出している。本サイトでも、『「開成OBをすぐ調べろ」岸田首相の強すぎる母校愛に震える霞が関の狼狽』という記事が22日に掲載されている。

 開成OB――特に霞が関官僚の喜びはひとしおだった。かつて、名門男子校の御三家といえば、開成、麻布、武蔵が挙げられた。首相や各界有名人を輩出してきた麻布と武蔵が凋落していく中で、開成は40年もの長きにわたり、東京大学進学合格者数でトップを維持。

 灘や筑波大附属、駒場東邦、ラ・サールなどが快進撃を続ける一方、トップの座を守りながら、各界に著名人を輩出し続けてきた。その一群に、政権を支える霞が関官僚も入る。

 開成高校OBの結束力の強さは知る人ぞ知るところだが、実は開成同様に仲間意識が強いのがラ・サールなのだ。東京の下町にある開成と、鹿児島市で寮生活必須のラ・サール。絆が強まる理由がわかる気もする。両校とも、省庁ごとに名簿が作成されており、2000年代後半以降は年に1度の割合で「省庁OBも含めた霞が関官僚」の会合が開催されていた。

 また両校には、政界転身組が多いことも共通しており、同窓会の主賓ゲストの常連組でもある。それでも首相の座を射止めた政治家はこれまでおらず、いわば、彼らにとって首相を輩出するのは宿願だった。

 そのような意識をうまくつなげ、2017年に「永霞会(永田町・霞が関開成会)」という組織にしたのは、実は、当時自民党政調会長だった岸田首相なのである。

 同会の事務局長には、旧自治省出身の井上信治前衆議院議員(当時・麻生派)が務めていた。井上氏も岸田首相同様、華麗なる一族だ。大病院の家庭に生まれ、縁戚に政治家もいる。親兄弟の中でただ一人、東大法学部を選んだ。理由は、「政治家になりたかったから」。総裁選では河野太郎陣営に付いたが、岸田首相が勝利すると早速「開成初の首相は(卒業生)皆の夢です」と、祝辞を述べている。