その後はビルマ族が少数民族を抑え、少数民族が抵抗するという構図に変わり、両者の間で抗争が繰り返された。その抗争で少数民族の武装勢力と戦ってきたのが現在のミャンマー国軍だった。

 こうした歴史から、国軍は伝統的に「国の統一を維持するためには自分たちが政治を主導しなければならない」と考えている。それゆえ、政権に固執しているのである。

国籍を与えられず弾圧を受け
難民化しているロヒンギャ族

 ミャンマーの歴史や国軍の体質は、2017年から深刻化しているロヒンギャ族の難民問題にも大きく関係している。

 ロヒンギャ族とは、ミャンマー西部のラカイン州に暮らす少数民族のこと。バングラデシュなどに多いベンガル系のイスラム教徒で、ビルマ族とは見た目や言語が異なる。少数民族といっても80万~100万人いるのだが、ミャンマーでは国籍を与えられず移動を制限されるなど、不当な差別にさらされてきた。

 このロヒンギャ族の武装組織アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)が2017年8月にミャンマー国軍や警察の施設を襲撃すると、治安部隊が反撃に出て掃討作戦を実施。このとき治安部隊はロヒンギャ族の村を焼き払ったり、女性や子どもまで殺害するなど残虐な行為を続けたという。結果、数十万人のロヒンギャ族が隣国のバングラデシュに逃れ、難民となったのである。

 2019年12月には、国際司法裁判所がジェノサイド(民族大量殺人)行為の停止を求めた。しかし、スー・チー氏は国軍を擁護する主張をし、問題解決に向けて積極的に取り組もうとしない。2021年6月には、国民統一政府(NUG)がロヒンギャ族に市民権を与える方針を打ち出したが、国内には反対の声も多く、実現するかはわからない。ミャンマーが「アジア最後のフロンティア」としての輝きを取り戻す日はいつになるのだろうか。