フィクションの影響を受けたと見られる犯罪
表沙汰にされないものも数知れず

 例えば有名なところでは、2004年に小学6年生女児が同級生を殺した事件。加害者はホラー小説や、中学生が殺し合う小説「バトル・ロワイヤル」のファンで、実際に同人小説まで発表していたという。

「マンガ、アニメ、ゲームが悪いみたいな方向へもっていくな!」というお叱りが飛んできそうだが、筆者もエンタメ作品の暴力的な描写が犯罪を助長するなどとは思っていないし、それらを規制するとかいう話には反対だ。

 しかし、凶悪犯の中には、架空の世界のキャラクターに憧れていたり、ストーリーに影響を受けていたりする人間がいる。抗議や規制というややこしい話に発展するのを避けて、表沙汰にされていないケースも含めればかなりある。

 例えば、今から20年ほど前、少年がサバイバルナイフで大量殺人をするという凄惨な事件があった。当時、週刊誌の記者として現地で取材していた筆者は、少年の友人たちから話を聞くことができた。すると、彼らは口を揃えて、残虐シーンのあるホラー映画を好んでいたことや、某人気アニメに登場する、刀を振り回して敵を斬るキャラクターの影響だと言った。少年の親友は「普段からこのキャラに憧れて、人を切る“ごっこ”遊びもしていた」と証言し、「絶対に間違いない」と断言していた。

 が、最終的に報じたのは、「ホラー映画の影響」だけだった。出版社としても、「アニメやマンガが犯罪を助長したかも」というストーリーは受け入れ難いし、人気アニメのファンから怒りの抗議がきても面倒なだけなので「ボツ」にしたのである。

 凶悪事件の裏側にはこんな話がゴロゴロ転がっている。服部容疑者も犯行の状況に鑑みれば、典型的な「キャラへの憧れ型犯罪者」だ。