「キャラへの憧れ型犯罪者」
服部容疑者が電車を選んだ背景とは

 2019年に公開され世界的ヒットとなり、アカデミー主演男優賞も獲得した映画「ジョーカー」は、心優しい善良な男、アーサーが社会の不条理に打ちのめされていく中で、悪のカリスマ・ジョーカーへと変貌していくストーリーだ。その中でピエロの仮装をしたアーサーがはじめて殺人を犯すのが、他でもない地下鉄の車両の中だ。自分を殴ってきた男たち3人を銃で撃ち殺す。この経験をきっかけにアーサーの狂気が暴走していく。つまり、ジョーカーは地下鉄内の殺人によって「覚醒」したのだ。

 報道によれば、服部容疑者は調布駅で、京王線の新宿行きの急行に乗車した直後に乗客を刺した。そして、国領駅付近で火を放った。

 もっと多くの乗客が乗り込む新宿駅付近で犯行に及んでもおかしくないが、なぜかそうしなかった。

 これは、あくまで勝手な推測だが、筆者は犯行を起こした区間が「地下鉄」だったからではないかと考えている。調布駅を出た京王線は地下を走っているが、国領駅を越えたあたりで、地上に上がる。映画「ジョーカー」の“覚醒シーン”の風景と異なってしまう。だから、「ジョーカーなりきり男」としては地下を走っている間に、どうしても凶行に及ばなくてはいけなかったのではないか。

 このような話を聞くと、「やはり映画やアニメを残虐な犯罪に結びつけているじゃないか」と不愉快になる方もいるだろうが、そのような意図はない。

 先ほども申し上げたように、アニメ、マンガ、ゲームなどの影響を受ける犯罪者が一定数いることは紛れもない事実だ。が、コンテンツが問題なのではなく、架空の世界の出来事と、現実の境界がなくなってしまう、犯罪者側の「幼稚な思考」こそが、問題だと言いたいのである。