打撃部門の「コスパ」は
痛快な結果に

 打撃陣に目を移すと、さらに驚くべきコスト・パフォーマンスに目が丸くなる。

 6年目で開花し、4番に座った杉本裕太郎はドラフト10位で入団。今季の年俸1400万円で、打率.301、83打点。32本塁打でホームラン王も獲得した。単純にホームラン1本で年俸を割れば、1本当たり43万7500円。29本で2位のレアード(ロッテ)は約2億4000万円だから1本当たり827万6000円。28本で3位の柳田悠岐(ソフトバンク)は6億1000万円、1本当たり2178万6000円となる。杉本のコストは、柳田と比べたら約50分の1。

 ヒットで見ると、杉本は今季144安打だから1本当たり9万7222円。今季115安打の巨人・坂本勇人は年俸5億円だからヒット1本当たり434万7826円。杉本のコストは坂本の45分の1となる。

 プロ野球ってこういうもんだよねえ、と長年のファンには笑い飛ばされそうだが、日頃からコスト・パフォーマンスに神経を注ぎ、わずかな変化さえ軽視しない経営者から見れば、このとんでもない差を放置していたのでは、プロ野球ビジネスを「経営」と呼ぶ気にならないのではないだろうか。

 その他の野手も、球団孝行の選手が目白押しだ。

 今季139試合に出場、初めてほぼフル出場を果たした宗佑磨は年俸1900万円。打率.272、ホームラン9本、42打点。オリックスは入団当初はショートでミスが目立った宗の俊足・強肩を生かそうと外野にコンバート。さらに三塁手として育てる方針を定め、オフにはオーストラリアのリーグに派遣するなどして育ててきた。その花が開いた。

 2年目で開幕ショートのポジションを得、攻守とも課題は多々指摘されながらもシーズンを通してショートを守り続けた紅林弘太郎は年俸720万円。これら選手たちをオリックスは抜てきし、選手はそれに応えてペナントを勝ち取った。なんとも痛快な出来事だ。