OculusのVR用ヘッドマウントディスプレー

 しかし、その状況に革命が起きたのは、オキュラス・ヴイアール(Oculus VR)社が「Oculus Rift」というVR用ヘッドマウントディスプレー(以下、VR HMD)を発表し、その数年後に発売を開始してからだ。

 目の前に2Dの四角いディスプレーがあるのとは異なり、VR HMDは頭にかぶって装着する形のディスプレーで、360度どこを見てもその映像しか見えない構造になっている。そのため、一般的なテレビやPCのモニターなどで見ている場合に比べて没入感が高いのが特徴だ。従来のVR HMDはプロ用途の製品であり、数千ドルという価格帯で一般のユーザーには手が出ない代物だった。しかし、2016年に一般向けに販売が開始されたときには599ドルと安価な価格設定になり、一般のユーザーでも買える値段になったことで普及が進んだ。その後台湾のHTCが「VIVE」(ヴァイヴ)という製品でこれに続き、こちらも人気を集めている。

Oculusブランドの現行VR HMD「Oculus Quest2」。スタンドアロン型で、パソコンに接続しなくても使用でき、ユーザーの動きをトラッキングできる(写真提供:Oculus)Oculusブランドの最新VR HMD「Oculus Quest2」。スタンドアロン型で、パソコンに接続しなくても使用でき、ユーザーの動きをトラッキングできる(写真提供:Oculus)

 オキュラス・ヴイアールは後にフェイスブックに買収され、その後はフェイスブックがOculusブランドの製品を販売してきた。フェイスブックが社名をメタバースにちなむ「メタ・プラットフォームズ」へと変更した背景には、Oculusブランドの製品が引き続き好調で、メタバースを次の成長戦略にできると考えたのだと捉えられている。

アップル、インテルがメタバース向け半導体を強化

 そして、二つ目のGPUの性能強化も大きなポイントだ。多くのVR HMDはWindows PCとセットで使うことを前提に考えられている。その時に画面をより写真品質で高性能に描画するためには高性能なGPUが必須だ。もともとPC向けのGPUは、NVIDIAとAMDという2つの半導体メーカーの寡占市場だったが、両社とも年々性能を強化しており、最新製品ではVR HMDと組み合わせて利用することで十分な表示品質を実現しつつあった。

 さらに、最近は半導体メーカーとしても注目を集めているアップルは、10月に販売を開始した自社の14インチ/16インチMacBook Proに搭載した新しい半導体製品「M1 Pro」、「M1 Max」の両製品でGPUを強化している。特にM1 Maxでは従来製品の「M1」に比べGPUの性能が4倍と強化されている。いまの所、アップルは自社製品向けにVR HMDを投入していないが、M1 Pro、M1 MaxともにNVIDIAの上位製品に匹敵するGPU性能を持っており、VR HMDを導入するのではないかという噂が絶えない。

 また、世界最大の半導体メーカーであるインテルもGPU製品の強化を進めており、来年には強力な描画性能を持つ「Intel Arc」という新しいGPUを市場に投入する。このように、GPUは半導体メーカーが激しい競争を繰り広げている注目の分野になりつつあり、今後もメーカー間の競争は続くとみられており、それに併せて性能はどんどん向上していく見通しだ。