メタバースが現実の延長線上として扱われ、
「デジタルツイン」を実現する

 こうしたビジネス向けのメタバースが実現しようとしているのは、英語で言うところの「Digital Twin」(デジタルツイン)の実現だ。デジタルツインとは、現実とメタバースの両方をリンクさせることで、メタバースを現実の延長線上として扱うことを目指していくことを指す。

 マイクロソフトはIgnite 2021で、グローバルコンサルティング企業のアクセンチュアが、Mesh for Teamsを利用する様子を公開した。マイクロソフトによれば、アクセンチュアは年間で10万人にも及ぶ新しい従業員を雇用しており、特にこのCOVID-19のパンデミックで彼らの研修をどうするかが課題になっていた。研修には、その企業や業務に必要な常識を学んでもらうという目的だけでなく、既にいる従業員と交流して会社になじんでもらうという目的もある。パンデミックにより、対面の研修ができなくなったことで、新しい従業員が会社になじめないという課題を抱えている企業は非常に多い。

 そこでアクセンチュアではニューヨークに設置している研修センターの機能を、Teams for Meshの中で実現し、ニューヨークの研修センターに来ることが難しい米国外の新規従業員の研修をメタバースで行うという取り組みを始めている。現実の機能をメタバースに置き換えることで、デジタルツインを実現していこうという意欲的な取り組みだ。


Microsoft Igniteのデモ。アクセンチュアが研修にMesh for Teamsを使う様子が紹介された(YouTube

 現在徐々にCOVID-19のパンデミックは収束に向かっており、混乱は収まりつつあるが、だからといって2019年以前の状況に完全に戻るのは難しいだろう。おそらく今後も多くの企業が対面とリモートワークの両立を迫られることになる。こうしたハイブリッド・ワーク環境下で、メタバースは「対面」と「バーチャル」のレベルをそろえる「デジタルツイン」を実現するツールとして、大きな役割を果たしていくと期待されているのだ。

 SFから始まり、ホビー用途を経てビジネスユースへ。メタバースは今後も要注目の技術だと言えるだろう。