最近、管理職になりたくない若年層の社員が増えている理由

 次の日の夕方、社長室に通されたE社労士は、早速A課長からC、Dの件について説明を受けた。説明が終わるとB社長がE社労士に質問した。

「他の会社でもウチの会社みたいな事例はあるのですか?」
「はい。最近は管理職になりたくない若年層の社員が増えているという話は聞きますね」
「それはどうしてですか?」

<社員から管理職昇進を断られる主な理由>
 〇部下のマネジメントに対する責任が重くなるから。
 〇今まで行ってきた担当業務に加えて、管理職としての業務が増えるから。
 〇ワークライフバランスの重視
  →世の中の風潮として、仕事と生活のバランスが取れるような働き方が好まれるから。
 〇やむを得ない事情があるから
  →自身の健康面での不安、育児・介護等の家庭の事情など。
 〇業務量が増えたのにもかかわらず、管理職になることにより残業代が出なくなり、実質給料が下がるから(一般的に課長職には役職に対する手当が支給されていることが多いが、その額が少ないケースもある)。

昇進を拒否した社員を、会社は懲戒処分にできるのか?

 B社長は腕組みをして言った。

「個々の理由は理解できましたが、昇進を拒否されたら会社の人事が成り立たない。もし会社の業務命令を拒否した場合、懲戒処分にすることはできますか?」

<昇進を拒否した場合、懲戒処分にできるか>
 〇会社から昇進の辞令を受けた場合、昇進について就業規則などに記載がある場合には、昇進のある労働契約を締結しているとみなされ、原則として拒否することができない。
 〇上記の定めがあるにもかかわらず昇進を拒否した場合、辞令=業務命令であることから、業務命令違反として懲戒処分にすることは可能である。
 〇ただし、絶対に拒否できないのではなく、どうしてもやむを得ない事情がある場合については会社が考慮する必要がある。
 ○内示とは、辞令を発令する前に本人に打診することで正式な決定ではない。しかし内示を断ることは正当な理由がない限り難しい。

「D君が昇進を断る理由は納得できるが、C君のは理由にならん。彼が私の辞令を拒否すれば懲戒処分の対象だな」

 B社長の発言にあわててA課長が横やりを入れた。

「ちょっと待ってください。C君には会社を退職されては困るんです」