米世論調査サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によれば、10月23日時点のバイデンの支持は平均42.3%、不支持は52.1%と、不支持が支持を上回っている。民主党候補にとっては、どうしようもない逆風だった。

 慌てた民主党からはオバマ元大統領、ハリス副大統領、そして終盤ではバイデン大統領自身もマコーリフ候補の応援に入り、「反トランプ」演説をぶち上げた。

「ヤンキンは常識的な共和党員などではない。トランプの言いなりの子犬を知事にしていいのか!」とマコーリフが対立候補を攻撃すると、バイデン大統領は「私は選挙でトランプと戦ったが、マコーリフはトランプの付き人(であるヤンキン)と戦っている」と援護射撃。ヤンキン候補がトランプ前大統領の支持者だから、選挙は事実上トランプ前大統領との戦いであることを強調したのだ。

 しかし、この「反トランプ」攻撃は不発に終わった。

 なぜなら、ヤンキン候補はトランプ前大統領本人から支持を得ていたにもかかわらず、選挙戦では終始トランプ前大統領から距離を置き、演説でも前大統領の名前を一切出さなかったからだ。そのかわり教育、税金、治安など有権者が最も関心がある生活に密着した話に終始した。

「この選挙は政党や政治思想の争いではなく、バージニア州の未来を模索する選挙です」

 そう言って、トランプ前大統領に不信感を拭いきれない無党派層を取り込んだ。その一方で、同州の学校ではリベラル派の危険な人種教育やLGBTQ教育が行われているといったトランプ流の文化戦争を仕掛けて保守層やトランプ前大統領支持者の票を獲得していった。

 この戦術を知るや知らずや、自己顕示欲の塊のはずのトランプ前大統領がヤンキンと同じステージに立つことはなかった。