先般の総選挙で議席を減らしたものの、261議席の絶対過半数を自民党単独で獲得して政治的な基盤を強化した岸田政権としては、独自の案を出しても良さそうな状況であった。しかし、一定の譲歩は求めたとはいえ、選挙情勢の詳細を踏まえて来年の参議院議員選挙を考えると、公明党の顔を立てることが上策だと判断したのだろう。

 もう1点推測すると、各種の「バラマキ案」の中で、この案は比較的規模が小さく予算に対する負荷が小さい。岸田政権は、財務省にも気を遣ったのではないだろうか。

「所得制限」や「クーポン」は
不公平で非効率で頭が悪い

 本稿では、自民・公明両党の幹事長会談の前に取り沙汰されていた「18歳以下に1人10万円一律現金給付」を経済政策としてあらためて評価してみたい。「良い点」と「悪い点」がそれぞれ複数ある。そしてそのことを通して、会談後に突如として登場した「クーポン」や、自民党が主張する「所得制限」がいかに不公平で非効率で頭が悪いかを伝えたい。

 なお、本稿では現金給付政策を「バラマキ案」と呼ぶが、すぐ後で説明するように筆者はバラマキが悪いとは思っていない。バラマキ政策にも良いものと悪いものがある。そして、良いバラマキ政策は最上の経済政策の一つであり、必要でもある。

「18歳以下に一律現金10万円」
当初のバラマキ案の良い点

 世間ではどうしても批判の声が大きく聞こえがちなので、はじめに「良い点」の方に目を向けよう。当初のバラマキ案である「18歳以下に1人10万円一律現金給付」には、良い点が二つある。以下の2点だ。

【「18歳以下に一律現金10万円」バラマキ案の良い点】
(1)現金給付なので使い道が自由でメリットが公平であること
(2)所得制限のない一律の支給であること