安すぎる翻訳者の報酬と
機械翻訳依存の危うさ

 都内で長年翻訳会社を経営しているMさんによると、「2008年のリーマンショック頃から、経費削減の一環として翻訳の価格が下がり、現在も低水準でとどまっています。それに加えて機械翻訳の台頭で、低価格化から抜け出せないままです」と話す。

プロ翻訳者の給与、低すぎ!間違いだらけの多言語サイトで危ぶまれる翻訳の未来キャリアガーデン(https://careergarden.jp/honyakuka/)を基に筆者作成  拡大画像表示

 今後もAIを活用した機械翻訳の精度が向上することで、翻訳の低料金化は加速することが予想されるが、問題はその結果として“機械翻訳依存”を招くことの危うさだ。

 なぜ、機械翻訳に依存することは危険なのか?都内で長年翻訳会社を経営しているMさんによると、機械翻訳には弱点があるという。

「文章を機械翻訳を使って外国語に置き換えていけば意思疎通が可能だと思っている人が多いのですが、これは間違いです。機械翻訳は、言葉の置換はできても、それがその文章に適切な表現なのかを判断することはできません。」

 もちろん、Mさんは機械翻訳を否定しているのではなく、機械翻訳には大量の情報を早く処理するという利点もあると話している。その上で、質の高い翻訳には機械翻訳と人の行う翻訳作業の両方が必要であること、それぞれの特徴やバランスを理解しなければならないことを強調する。

「正しい情報を分かりやすく伝えられるように翻訳の質を担保するためには、機械翻訳ツールだけでなくプロの翻訳者が必要です。彼らが参入し活躍できるような料金形態を設定するべきです」