特殊部隊への補給のため夜間飛行をしていたヘリコプターがミサイル発射の火柱を目撃、そちらに向かったところ、もう1基が発射準備をしているのを発見し、機関銃で処理したのが唯一の成功例だ。

 それ以来30年間で精密なミリ波レーダーや赤外線探知などの探知手段が発達したが、一方で北朝鮮の中距離弾道ミサイルは液体燃料から固体燃料になり、移動や即時発射が容易になったから、発射前に弾道ミサイルを発見し破壊するのは一層困難になった。

「ミサイルが日本に向けて発射されようとしている際に、攻撃するのは自衛権の範囲内」との説は法律論としては成り立つが、効果は期待できない机上の空論だ。

 相手のミサイル発射機がトンネルから出て、ミサイルを立てているところを仮に発見できたとしても、訓練や整備をしていることもある。実験のために海上に発射しようとしているとか、日本以外を狙っていることもあるから、日本に向けて発射しようとしているのか否かは知りようがない。

「朝鮮半島有事」となれば
米軍・韓国軍がミサイルを叩く

 すでに北朝鮮軍と米軍・韓国軍が戦争を始めている場合には、日本の米軍基地も弾道ミサイルの目標となる公算が大だから、日本が狙われている確証がなくても日本が攻撃するのは現実的には許容されるだろう。

 だがそのような状況では米軍、韓国軍は必死になって北朝鮮のミサイルを破壊しようとしているだろう。

 北朝鮮は200~300基ほどの弾道ミサイルを持つと言われるが、韓国は射程300キロの「玄武A型」から射程800キロの「玄武2C型」まで計約2000基の弾道ミサイルのほか、射程1500キロの巡航ミサイル「玄武3C型」も造っている。

 韓国空軍は戦闘機、攻撃機計約500機を持つのに対して北朝鮮の空軍はもはやなきに等しい。このため、韓国空軍は防空の必要が低く、対地攻撃を主な任務としている。

 米軍も日本に駐留する米空軍、海兵隊航空部隊、空母1隻で計約100機、在韓米空軍も約100機いるから、攻撃能力には全く不足がない。

 仮に航空自衛隊が韓国軍の許可を得ず北朝鮮攻撃を行ったり、海上自衛隊が巡航ミサイルを発射したりすれば韓国軍にとってはむしろ邪魔になりそうだ。