クリエイター向けAI基盤「Adobe Sensei」

 Creative Cloudを2012年に導入して以来、アドビはさまざまなクリエイターの創作活動を助ける機能を追加してきた。2016年にはマシンラーニング(機械学習)の手法を利用したAI機能を提供する基盤となる「Adobe Sensei」(日本語の“先生”から命名されている)を発表して、年々その機能を拡張してきた。例えば、最新版のPhotoshopには「ニューラルフィルター」と呼ばれるAIを活用した機能が用意されており、AIに特定の条件、例えば「夏の写真を冬の写真にしてほしい」などの指定をすると、従来なら数時間かかってクリエイターが手動でやっていた作業が、数秒とかからず合成写真を作成してくれ、クリエイターの生産性を大きく向上させている。

Adobe SENSEIAdobe SenseiのAI機能。Photoshop上で開いた風景写真を、AIを使って、冬の風景や、春の風景にしたりできる。人間が手動でやれば数時間かかっていた作業が、一瞬で完了する Photo:Adobe

 また、近年ではiPhoneやiPadといったモバイル機器への対応を進めている。従来クリエイターが創作作業を行うには、デスクトップPCなどの高い処理能力を持つパソコンが必要だった。しかし、近年ではモバイル機器の性能向上が著しく、出先に持っていったiPadのようなモバイル機器でも十分に創作活動ができるようになってきている。特にiPadの上位モデルではペンが利用可能になっており、そうした新しい入力機器の登場も、クリエイターのモバイル機器の利用を後押ししている。アドビはiPad向けに、同社の二つの主力製品(Photohop、Illustrator)を提供しており、こちらもクリエイターの生産性を大きく引き上げている。

 そうした取り組みが功を奏して、Creative Cloudを利用しているクリエイターのデジタルトランスフォーメーション(DX)は済んでいた、それがパンデミックになってもクリエイターが戸惑わなかった大きな理由であり、そしてCreative Cloudが、パンデミックでもさらなる成長を見せた理由だと考えることができるだろう。