EVトラック製造技術の
ブレークスルーへの期待

 2022年からいすゞはEVトラックの量産を開始する模様だ。背景には、航続距離や積載量を向上させる技術的なブレークスルーを実現したことがあるはずだ。

 EVトラックには、航続距離が短いという致命的な欠点がある。今年に入って物流業界では、国内のスタートアップ企業が設計と開発を行い、中国のEVメーカーが受託生産を行う小型トラックの導入が発表された。それらは1回の充電で200~300キロメートル走行する。積載量も小さい。

 つまり、物流の集配拠点から最終配達先までの「ラストワンマイル」を埋めるための、近距離移動を念頭に開発されている。逆に言えば、EVトラック分野で低価格と、航続距離や積載量を引き上げる「両立」が難しい。

 EVトラックの課題を克服するために、各国自動車メーカーは事業運営体制の強化を一段と重視し始めた。独ダイムラーはトラック部門(ダイムラー・トラック)を分離して上場させる予定だ。ダイムラー・トラックは経営体力を強化して、より効率的にEVトラック関連技術の開発と向上に集中する意向だ。

 米国では11月10日、EVピックアップトラックを生産するリヴィアンが米ナスダック市場に上場し、当日の終値ベースの時価総額はGMと肩を並べた。

 競争が激化する中でいすゞは2~3トンクラスのEVトラック量産を目指す。物流に加えて引っ越しでの利用も想定しているという。

 引っ越しは短距離移動ばかりとは限らない。詳細は今後の展開を確認する必要があるが、いすゞは中国メーカーが手掛ける低価格、近距離での利用目的とは異なり、ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い。

 さらに、報道によると、1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発された。かなりのスピード感を持って、いすゞはこれまでになかったEVトラックの量産体制を確立しつつあるとみてよいだろう。