プライベート・ツアーで学ぶ
グレンキンチーの歴史

改装してモダンにリニューアルした館内改装してモダンにリニューアルした館内

 朝11時、蒸溜所の受付にてツアー参加者が全員揃ったところで、鐘が鳴らされました。この日は総勢11人とさほど多くないので、慌てずゆっくりまわれそうでした。入館時の手指消毒に加えマスクも着用し、完全装備でいよいよウイスキーの旅へと出発です。タータン・チェックのベストを粋に着こなした、スコットランド紳士のウィルさんが案内役です。

 驚いたことに、彼ははじめに皆で自己紹介をしたあと、参加者全員の名前をきちんと覚え、随所で名前を呼びかけてくれました。サービス業の鑑とも言え、こういったところが大型観光施設では味わえない魅力のひとつだと、つくづく実感します。小さな差異が、大きな魅力となります。

黄金色に輝くジョン・ウォーカー氏がお出迎え黄金色に輝くジョン・ウォーカー氏がお出迎え

 ツアーが始まり、まずはグレンキンチー蒸溜所の歴史や業務内容についての講義を受けます。ひとつめの部屋に入って真っ先に目にするのが、世界的に有名なスコッチ・ブランド、「ジョニー・ウォーカー」の創始者である、ジョン・ウォーカー氏の像。

 シルクハットに手をやり、燕尾服でステッキを片手にさっそうと歩く姿が、ブランドのアイコンとしてウイスキーのラベルになっています。エジンバラ市内でも町のあちこちで、看板や壁絵などを頻繁に見かけることになりますが、像、それも黄金色とは珍しいです。

 ジョニー・ウォーカーは、複数の蒸溜所の原酒を混ぜてつくられるブレンド・ウイスキーであり、グレンキンチーはその原酒を提供している蒸溜所のひとつです。

 1825年、農民であったレイト兄弟は原点となるミルトン蒸溜所を建て、1837年に現在のグレンキンチーに改名しました。途中、売りに出され一時は関係のない製材所になるなど、紆余曲折を経ましたが、1880年にはグレンキンチー蒸溜所として復活、第二次世界大戦中、ほかの蒸溜所が操業停止に追い込まれるなか、影響を受けずに操業を続けることができました。

 現在はイギリスの大手酒造企業であるディアジオ社の傘下にあり、その主力製品であり、世界でもっとも普及しているスコッチ、「ジョニー・ウォーカー」のブランドを支えています。