期限を待たずに「ゼロ円」を提示、
背景には槙野に対する配慮が

 12月9日の期限を待たずして浦和側が「ゼロ円」を提示した背景には、ホーム最終戦でファン・サポーターへ別れを告げる場を設けさせたいという思いや、早い段階で新天地探しをスタートさせられるように、という配慮もあったはずだ。

 今シーズンの年俸が8000万円の槙野だが、契約満了に伴う退団のため、移籍金は発生しない。明るいキャラクターを介してチームの雰囲気や結束力を高める役割も担えるだけに、各クラブが減収を余儀なくされるコロナ禍で年俸減こそ避けられないが、J1勢を中心に守備力の強化を考えるチームが間違いなく手を挙げるだろう。

「他のクラブの違うユニフォームを着てプレーする姿を、今はまだ想像できません。ただ、時間をかけてでも今の自分の状況をしっかりと整理して、今後に何が必要なのか、自分が何を求めているかを考えた上で、次のステージに向かっていきたい」

 涙をこらえながら前を見すえた槙野は、Jクラブの監督を務める上で必要なライセンスの取得へ向けて、すでに準備をスタートさせている。順調にカリキュラムを消化していけば、37歳になる2024年から資格面での環境が整う。

 前出のゴンは、昨シーズン限りでJ3のアスルクラロ沼津を退団。12年ぶりに復帰した古巣・磐田のコーチとして、3年ぶりのJ1復帰に貢献した。いつかは誰にでも必ず訪れる別離は、未来に待つはずの新たなドラマへのプロローグになる。(年俸の金額は全て推定)