海外ではエンジンロック装置を
違反者に義務付け

 八街市の事故を受け、呼気から基準値以上が検出されるとエンジンがかからなくなる「アルコール・インターロック」(以下、装置)も注目され始めた。国土交通省の定義では「エンジン始動時、ドライバーの呼気中のアルコール濃度を計測し、規定値を超える場合には始動できないようにする装置」とされる。

 1980年代に米国で学生が原型を開発し、90年代には実用化されるようになった。国内では自動車メーカーではなく、部品メーカーが製造・販売している。メーカー各社のホームページなどによると、国内での価格は十数万円というのが一般的だ。ユーザーのほとんどは運送会社だが、家族がアルコール依存症で運転させない目的で購入する個人もいるようだ。

 前述の通り、国内では事業者に対する検知が義務化されるが、息を吹き掛けてアルコール濃度を検知する「アルコールチェッカー」が使われるとみられている。やはり安全が最優先であっても、中小の事業者にとってはこの価格の装置を全車両に装着するのは懐事情が厳しいというのが正直なところだろう。

 一方、海外では飲酒運転の違反者に装着を義務付けたり、装着された車両に限定して運転を認めたりする国もある。

 死亡事故の約4割が飲酒運転と言われる米国では、再犯者に一定期間の装着を義務付けている。各州の規定や違反回数などによってまちまちだが、各裁判所が期間を指定し、状況をモニタリングしている。

 カナダでは、飲酒運転で摘発された回数に応じて一定期間、または生涯において所有したり、運転したりする車に装着を義務付けている。両国は国土が広いにも関わらず公共交通機関が整備されていない地域も多く、生活に車が必要不可欠なため、装着の義務で救済措置としている側面もある。

 欧州では国によって違いはあるが、全体的には死亡事故の4分の1が飲酒運転とされる。米国やカナダと同様、英国やフランス、ベルギー、オーストリア、スウェーデンなどで免許停止処分の代替として、装着を義務付けている。

 このほかフィンランドでは、道路庁と契約する事業者の大型トラックに装着を義務付け、関係車両にも任意での装着を要請するなどの取り組みもみられる。

 国内では、警察庁や国土交通省、経済産業省が日本自動車工業会と連携し、十数年前からアルコール・インターロックに関する勉強会を随時開催し、様々な面から検討が重ねられている。標準装備の義務化も期待されるが、現実的にはまだまだ先の話のようだ。