肩書で呼ぶのをやめよう!社風を変えるのに心血注ぐ

 当時、社内では「××部長」、「○○課長」といった肩書を重視する名前の呼び方がはやっていた。それをやめさせようとして、直接、名前のみであいさつしようと提案した。しかし、社員の誰も応じなかった。

 苦悩した楊氏は朝早く会社に出勤して、会社の正門の前に立って、出勤する社員を迎えた。「楊総早(楊社長、おはようございます)」とあいさつした社員に対しては、社内に入るのを認めない。「元慶早(元慶、おはよう)」と呼び方を改めた社員だけを通した。こうしていろいろと苦労して会社の空気を変え、新しい文化を定着させ、やがて柳会長が育てた会社をさらに大きく伸ばし、世界に雄飛する企業となった。

 私のインタビューを受けるために、地方出張に行く午前の航空券を夕方頃に変更してまで私のスケジュールに合わせてくれたり、非常に協力的な楊氏ではあるが、最後の最後まで、日本の中国語紙に掲載された私の記事の内容と私の自宅の電話を彼に知らせた人の名前を教えてくれなかった。「日本にいる中国人で、あなたを尊敬するファンだ」とお茶を濁すばかりだ。

 長年、尊敬していたレノボがボロクソに批判されているのを見て、この会社の歩んできた道を知っているだけに、心を痛めた。

 売り上げ重視で、技術開発に対する熱心さが足りないといった問題も確かに存在している。役員報酬の可否も議論する必要がある。しかし、今回の動画の拡散の背後にある思惑を、私は警戒する必要があると思う。特に国有資産の流出といった批判は事実が曖昧で、こうした動きに対しては慎重に観察していく必要があるだろう。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)