大量生産からイノベーションへ
今は、会社の仕組みを変えるチャンス

 コロナにより一度これまでのやり方が崩れた現在は、チャンスとみることもできる。以前から始まっていた“メンバーシップ型かジョブ型か”などの議論が一気に進んでいるからだ。古市氏も、「大量生産に適していた純血集団(ホモ)から、イノベーションを生むのに適した雑種集団(ヘテロ)に移行するには絶好の時」という。つまり、メンバーシップ型、終身雇用・年功序列を前提にした組織からの脱却だ。

従来の働き方(左)とこれからの働き方(右) Photo:Box従来の働き方(左)とこれからの働き方(右) Photo:Box

 クラウドはそのような効果ももたらすことができるというのが古市氏の意見だ。自社専用にこしらえたシステムは習得に時間がかかるし、ビジネス環境の変化に合わせて流動的に変更していくのも簡単ではない。しかしクラウドサービスとして提供されている標準的なITシステムを導入していれば、変化に合わせて必要なツールを簡単に導入でき、中途採用で入ってきた社員もすぐに使いこなせるようになる。「これによりジョブ型の雇用や配属を促進できる。ジョブ型は、適材適所ではなく適所を適材に――必要なジョブ内容を明確にしてそれが得意な人に任せる。社内にいればその人、いなければ社外から連れてくる」(古市氏)。

 こうした「簡単に導入できる」というクラウドのメリットをもっと活用すべき、と指摘する。クラウドは星の数ほどあるが、「1つのサービスに固執せずにいろいろなサービスを試すことが大切。発想を変えなければならない。『ITが変わると仕事が滞るから変えられない』のではなく、『どんどん進化するクラウドサービスの果実を取る』。そのためには、絶えずアンテナを張り巡らせて、それぞれのエリアでいいアプリは何かを調べ、使いこなすこと」(古市氏)

DXの前にやるべきことがある

 イノベーションを生む組織へ企業が生まれ変わるために、古市氏が提唱するのは「DX(デジタルトランスフォーメーション)の前の『コーポレートトランスフォーメーション』」だ。

いきなりのDXは無理なので、まずはCX(コーポレートトランスフォーメーション)が必要 Photo: BoxいきなりのDXは無理なので、まずはCX(コーポレートトランスフォーメーション)が必要 Photo:Box

 コーポレートトランスフォーメーションとは、まず(1)「ITへの理解」、次に(2)「IT部門の強化」、最後に(3)「全社員によるITの活用、社外人材の活用」という3ステップだという。これを行うことによりツールの導入が進み、また、社内のITをSI事業者任せにせず内製化することで自社の業務に合ったITの活用が可能となる。

「コロナにより仕組みが変わりつつある現在、少しずつ大量生産に適した仕組みから脱却して、イノベーションに適した仕組みに変えること。これを進めることで、コロナ後も揺り戻しのない体制を構築できるのではないか」(古市氏)