長期投資ならケースによって
下すべき判断は異なる

 短期投資の場合は、いずれのケースでもいったん見切った方が良い、いわゆるリスクオフの状態にする方が良い場合が多いが、長期投資で臨む場合、全く方針は異なってくる。

 端的に言えば、前述の三つ目の「社会問題や事件」のケース、すなわち今回のような下落の場合は何もしない方がいい。焦って売ってしまうと次になかなか買い直すことができなくなる。昨年3月のコロナ禍による下落でも慌てて売ってしまった投資家がその後、市場に戻れなかった人は多かった。次に二つ目のケース、つまり金利上昇や景気の悪化といった経済全体のファンダメンタルズが悪くなることで相場全体が下がる場合である。

 例えば、現状の米国のようにインフレ懸念から金利上昇が予測される場合である。これもよほど極端な場合でなければ、慌てて売る必要はないだろう。自分が投資している企業が今後も利益成長を続けていくのであれば、持ち続けても問題はない。どんな弱気相場にあってもその企業の利益成長が続く限りは株価の上昇を止めることはできないからだ。

 問題は前述の一つ目のケース、自分が投資している企業の業績が悪化したり、悪材料が出たりした場合だ。基本的には長期投資であったとしてもこの場合は売った方が良いケースもある。それは、その悪材料が明らかにその企業の稼ぎの中心をなすビジネスに大きな影響を与え、しかもそれが続くと予測される場合だ。結果論ではあるが、これはその企業の先行きに対して誤った判断をしてしまったわけだから、長期間にわたって低迷が続くよりも売ってしまった方が良いということもあり得る。

 しかしながら、企業が成長していく過程では悪材料が出てくることはしばしば起こり得ることであり、その度に売ってしまっていては長期的な株価上昇の恩恵を受けることは不可能である。したがって、目先的な悪材料が出たとしても下落した場面で売るのではなく、長期保有を続けるのが原則と考えた方がいいだろう。なぜなら、そうすることで5倍、10倍に成長する恩恵を受けることができるからだ。

 長期投資というのは10年、20年という単位で考えるべきである。GAFAにしても日本のファーストリテイリングやエムスリー等にしてもそうやって長期に企業の成長を取りにいくというのは、「待つこと」、そして「我慢すること」という対価を払って最も大きな成果を得られることであると言って良いだろう。