足利尊氏Photo:PIXTA

一人の突出したリーダーが組織を成功に導く――というケースは現実的には少ない。歴史でもそれは同じだ。複数の指導者が協力し合って組織を運営することでうまくいく。その好例が、室町時代初期の足利尊氏とその弟、直義である。彼らの「二頭体制」は、人事の組み合わせがうまくいけば素晴らしい効果を発揮すること、そしてその効果を続けることがいかに難しいのかを教えてくれる。
※本稿は、『人事の日本史』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

足利尊氏と直義に学ぶ
「二頭体制」の強みと難しさ

 人々は「理想のリーダー像」を歴史のなかに探し求めてやまない。よいリーダーが現代に不足していると感じるからだろうか。歴史上のさまざまな名君・名将の姿を今に重ね合わせるのは、ビジネス誌の定番企画になっている。

 だが歴史が教えるのは、むしろ、一人の突出したリーダーによって組織が担われるのは稀だということのように思える。たいがいの時代、たいがいの組織はそうしたリーダーをもたず、複数の指導者が協力し合って組織が運営されている。それでうまくいく場合が多いのだ。

 完璧な人間などおそらくは存在しない以上、理想のリーダーが稀であるのは当然だろう。人はみな偏りをもち、固有の長所と欠点がある。現代の人事においても、一人のリーダーに期待するより、互いの属人的な欠陥を打ち消し合うような人材配置を工夫するほうが、現実的であるはずだ。

 この人事的な「組み合わせ」がうまくいけば、互いの長所が相乗的に機能し、素晴らしい効果を発揮する。だが難しいのは、その効果を持続させることだ。その効果も、その難しさも、やはり歴史が繰り返し教えている。

 足利尊氏と直義の二頭体制は、その好個の例である。