「今、海外で多くの人々が日本酒に関心を持っています。高額な日本酒を飲みたいという話も聞きますし、来日して蔵を回る海外ディストリビューターもいます。ところが、彼らが得られる日本酒の情報は圧倒的に少ない。

 国内・海外を含め、あらゆる日本酒に関心がある人に、正しい情報を伝えたいのです。

 今の時代、ネット検索しても情報が出てこなければ、存在しないも同然です。いくら品質が良くても、消費者は購入に至りません」

 特に、日本酒のラベルは、外国人にはもちろん、日本人にもなかなか分かりにくいところが多いので、ラベルスキャンや単語検索によって簡単に多言語で情報を提供する仕組みを作った。また日本酒の場合は欲しい商品がどこで売っているのかも分からないことが多いので、その情報も伝える。生産者にとっては、潜在顧客へのアプローチやファンの囲い込みなどが可能になり、顧客接点を強化するツールとなる。

「もちろん、まだ完璧だとは思っていません。ゆくゆくは生産者ごとにカスタマイズしたいし、造り手・流通・買い手らがつながるためのプラットフォームとしての機能を、さらに整えていきたいと考えています」

温度管理の重要性は
日本酒だって同じ

中田英寿氏が日本酒業界に持ち込んだ「イノベーション」の中身JAPAN CRAFT SAKE COMPANYが開発したSAKE CELLAR。日本酒にとって理想的な保管温度であるマイナス5度に設定できる

 二つ目の「きちんとした品質の担保」については、日本酒のおいしさを最大限に保つ日本酒専用セラー「SAKE CELLAR(サケセラー)」を開発している。

「日本酒は非常にデリケートな飲み物です。最近、伸びてきた人気の蔵元ほど、酒が出来上がった後の管理に気を配っています。蔵元と話をしていて、次に買いたい設備は何かと聞くと、多くの人が冷蔵庫と答えます。それだけお酒が出来上がった後が重要ということです。保管の温度帯は蔵元により異なりますが、0度以下は当たり前で、いろいろな蔵を回った中では、マイナス5度にしているところが結構ありました」

 ところがワインに比べると、日本酒の温度管理の概念は、まだ流通や飲食店に届いていない。温度次第では、品質はあっという間に下がってしまうのは言うまでもない。