「30年以上前にフランスや米国に行った時は、当たり前のように常温で、中国酒の隣に日本酒が並んでいました。ハードリカーというイメージが強かったのでしょう。

 日本酒を管理するという発想は最近のもの。ただ、ワインセラーに入れておけばというのもありますが、生酒や長期熟成させる日本酒には温度が高すぎます。海外での日本酒は、日常に飲まれるものではない。空く回転が遅いともなれば、より一層、温度管理が重要です。

 私はワインも好きなのですが、そのワインもまた、昔から温度管理があったかといえば違う。嗜好品として価値が認められ、それ相応に扱われるようになったから、熟成も良きものとなった」

日本酒の適正価値を世に問う
業界初の日本酒の入札会を主宰

 ある程度の啓蒙活動のなかで、日本酒の地位向上を目指すべきと、水野氏は考える。とはいえ、ただ待っているだけではない。2018年には業界初とも言える、日本酒の入札会が黒龍酒造主宰のもと実施された。

 従来だと、蔵元による小売価格設定が日本酒業界の通例ではあるが、「日本酒の適正価値を世に問う」というかたちで、さまざまな人が駆けつけた。品質評価委員会によるテイスティングコメント、細かなスペック、分析値などのデータを参考に、黒龍酒造の全国の特約店(酒販店)自らがテイスティングし、価格と購入数量を入札した。用意された日本酒『無二』は、定数を上回る購入価格で取引されたという。