こうした社会の分断の中でも、政権与党内の団結は固く、政策の失敗やスキャンダルがあってもお互いにかばい合い、反対派をたたくことで自己を正当化、独裁体制を確立し、文在寅政権5年目となってもレームダック化を防いできた。

 しかし、ここに来ての新規コロナ感染者の急拡大とオミクロン株の韓国内感染である。

 韓国は既に冬季に入っている。新規のコロナ感染は増えるだろう。そしていったんオミクロン株の感染が拡大し始めると、韓国政府にとって有効な対策は取りづらくなるだろう。そうなれば文政権を支えてきたコロナ対策「K防疫」成功の神話は瓦解するだろう。K防疫の失敗は、文政権に致命的な打撃を与えかねない。

 その時に、与党「共に民主党」の次期大統領候補である李在明氏がどう動くか。文大統領と運命を共にすることにはならず、与党内で文大統領派と李在明氏が対立分断されるような状況になっていくのではないか。文政権の分断政治の結末は、文大統領と李在明氏の関係にも溝を作るのだろうか。

感染者数は過去最多
高まる医療崩壊リスク

 文政権が先月1日から進めた段階的日常回復(ウィズコロナ)で1カ月間に新規のコロナ感染者は倍増。2日の発表では5266人と1日に初めて5000人を突破してから2日連続で5000人を超え、過去最多となった。これまでの最多感染者は先月24日発表の4115人だった。重症患者も733人で前日の723人を10人上回り過去最多を記録した。死者が増大しているのは医療体制が追い付かないからだとも言われている。

 特に緊急の課題は医療崩壊をいかに最小限に食い止めるかである。

 全国のコロナ重症者用病床は先月29日、1154床のうち906床が既に使用中(使用率78.5%)で、政府が「非常計画」の発動を検討する基準である75%を初めて超えた。

 ソウル市に限れば91%であり、ソウル市の5大病院の重症者用病床で残っているのは8床のみである。最悪の場合、12月末に重症者用病床が最大2000床まで必要になる可能性があるという。

 これを受け、韓国政府はコロナ患者に在宅医療を原則として適用することにした。しかし、専門家は「(これは)在宅治療ではなく事実上在宅監察という状況で、高齢患者は少し悪化するだけですぐに重症、死亡につながる恐れがある」と警戒している。そうなれば重症病床のひっ迫はさらに深刻になり、誰の命を優先するかという選択肢しかなくなる恐れがある。