李在明氏を悩ませる
文大統領との距離感

 文大統領が誇ってきたK防疫の成果は、既に風化した。残された事実は、文大統領が行ってきた政策はほぼすべて失敗だったということである。

 李在明氏は、与党「共に民主党」の中では非文在寅派である。大統領選挙に勝ち抜くためには親文在寅派の支持を得ることが不可欠である。また、文大統領の支持率は一時下がったこともあったが、概ね40%前後を維持している。このため、親文在寅派と離れることはあまり得策ではなかった。

 他方、次期大統領選挙に勝つためには20代、30代や中間層の支持が欠かせない。しかし、若者世代の支持は文大統領から離れてしまった。中間層の人々も文政権に期待していた「公正さ」がむしろ遠のいたことから、革新系の文政権に失望し、支持が離れてしまった。

 こうした状況下で文大統領と同一視されることは、李在明氏の選挙活動にとって有利に働くとは考えられない。李在明氏にとって、文大統領との距離感をどう取っていくのかは難しい課題となっている。

李在明氏が
文大統領批判を強める理由

 朝鮮日報は、「李在明氏、候補になった途端に態度が変わった」と題する記事を掲載した。同紙は、李在明氏が文政権との違いを強調する選挙戦略について青瓦台は苦々しく感じているようだ、と報じている。

 李在明氏はすべての国民を対象に25万~30万ウォン(約2万4000~2万9000円)の災害支援金を上乗せして支給するよう文政権に要求した。ただ、この要求に対する支持が多くないことから短期間のうちにこの公約は撤回した。

 また、若者を取り巻く問題についても、「私たちは彼らが感じている苦痛に本当に共感し、話を聞こうと切実に努力でもしたのだろうか。最近は深く反省しつらく感じている」と述べ、現政権の政策を遠回しに批判した。

 李在明氏は20代、30代に会って感じたこととして、このように若者の苦痛に言及した。これは若者の支持を狙った発言だが、同時に文政権の政策を批判したものと受け取られている。何事も自画自賛で反省しない文政権からすれば厳しい指摘だろう。

 政府与党からは、大統領選挙に出馬した過去の候補者たちはほぼ例外なく任期末となった政権との違いを強調してきたという声が出ている。その時の政治的状況によって、政権と政策面で距離を置く候補者から、レームダック化した大統領と対立する候補者までさまざまだ。

 朴槿恵(パク・クネ)氏は李明博(イ・ミョンバク)大統領に離党を求めなかったものの、それ以外の大統領は皆、政権の最終年に離党させられてきた。

 文大統領は20代、30代の若者、中間層の支持を失った。このため李在明氏としても、彼らの不満をそらすためには、文政権の政策とは差別化を図らざるを得ない。

 しかし、そのことは親文在寅派が主流を占める「共に民主党」内部の結束を揺るがすことになる。李在明氏の行動に対する親文在寅派の警戒心は高まっており、与党内の李在明氏への支持を揺るがす事態に発展する可能性もある。