ゴーン問題から丸3年が経過
内部では自信喪失が続いている

 2018年11月に当時の日産会長だったゴーン氏が逮捕されてから、丸3年が経過した。その後、日産に対する成長期待は停滞したままだ。ゴーン問題によって企業イメージは傷つき、その後も同社内部では自信喪失が続いているように見える。ゴーン問題の影響は深刻だ。

 まず、事業戦略面の影響は大きい。1999年にゴーン氏の指揮の下、「日産リバイバルプラン」が実施され、東京・村山工場の閉鎖など大規模なリストラが行われた。それは、わが国の商慣習になじんでいない「海外出身のプロ経営者」だからこそ実現できた経営再建だった。

 その一方でゴーン氏は、新しい自動車を生み出すことよりも、新興国におけるシェア拡大戦略を急速に進めた。その結果、過度な設備投資が負担となり、収益性は高まりづらかった。

 また、雇用基盤を強化したいフランス政府の意向もあり、ゴーン氏は日産と三菱自動車、ルノーの経営統合を進めようとした。加えてゴーン氏は、自らの利得も過度に重視した。そうした結果、組織内部で不満や先行きに関する動揺が増えた。ゴーン氏の逮捕によって組織全体が急速に不安定化し、利害関係者との信頼関係は毀損(きそん)された。

 とはいえ、ゴーン時代の日産がいち早くEV開発に取り組んでいたのは注目すべきだ。日産はEV「リーフ」を国内市場に投入し、国内自動車メーカーの中でもEVシフトを早い段階から進めていた。

 ただし問題は、当時の日産が、海外バッテリーメーカーとの提携などによってEV価格を引き下げ、世界的な普及を目指すには至らなかったことだ。それは、ゴーン時代の事業戦略の不備だといえる。

 その上に、新型コロナウイルス・ショックによって日産とルノー、三菱自動車のアライアンス全体で収益が減少した。今夏には、東南アジアでのコロナ感染再拡大によって、半導体など自動車部品の調達が世界全体で減少し、日産は販売台数の見通しを下方修正した。