「本当に生き残れるか」
懸念が高まる日産

 今後、日産がどう生き残りを目指すか、先行きを懸念する利害関係者が増えている。独ダイムラーによる仏ルノー株売却は、その一つだ。

 ルノーにとって、日産の製造技術は世界シェアの拡大に欠かせない要素だった。ダイムラーは、日産や三菱自動車との経営統合を目指すルノーとの資本関係を強化することで、日産の技術力を取り込みたかった。

 しかし、ゴーン氏が逮捕され、経営統合は棚上げとなった。その上にコロナ禍が発生したことによって、ルノーが重視したアライアンス強化の取り組みも停滞している。アライアンスの要である日産の事業運営体制が不安定であるため、ダイムラーは日仏連合との提携継続の意義が低下したと判断したようだ。

 他方で、EVシフトは加速し、自動車とIT先端技術を結合させる重要性が高まっている。独フォルクスワーゲンが中国のバッテリーメーカーと合弁を組んで、欧州や中国で生産能力を強化するなど、自動車メーカーの事業範囲は急速に拡大している。

 ダイムラーはルノー株売却によって得られた資金を、電動化などの新しい技術の創出や、EVスタートアップ企業などとの提携強化に活用したい。逆に、ダイムラーとの関係が弱まった日産やルノーが、どのようにアライアンス体制を立て直してバッテリー生産コストの引き下げや、新しい技術の開発を進めるか、先行き不透明感は高まっている。

 わが国では自動車業界が3陣営に集約された。トヨタはスバルやダイハツなどとの提携を進め、電動化を急ぐ。ホンダは米ゼネラルモーターズと提携しつつ自主性を発揮して電動化を加速させる。いずれの事業運営スピードも日産より早く、設備投資も積み増されている。世界の自動車業界で脱炭素やデジタル化に対応するために異業種を巻き込んだ提携や自動車メーカーの経営統合が増えているが、日産の取り組みは遅れている。