韓国の大企業には、有能な経営者が多く、財閥のオーナーが不在でも通常の業務遂行には問題はない。しかし、主要な新規事業に当たっては依然としてオーナーの決断は欠かせない。

 サムスンは現在、インテルや台湾のTSMC、中国勢などとの熾烈(しれつ)な半導体覇権の争いを繰り広げている。サムスンは171兆ウォン(約16兆8000億円)という大規模投資を通じて、非メモリー半導体の育成戦略を発表しているが、実質的オーナーの李副会長の不在で具体的な投資計画は先送りされてきた。

 李副会長の不在を懸念する声が韓国内で高まる中、8月13日仮釈放された。その後、李副会長は11月に訪米しており、約170億ドル(約1兆9000億円)の米国への新規投資が近々決まるだろうといわれている。

 サムソンばかりでなく、これまでに現代、SK、ハンファなどそうそうたる財閥のオーナーが起訴されてきた。韓国政府の財閥たたきは経営力の弱体化を招いている。

労働組合の横暴が
韓国経済の足を引っ張る

 財閥系企業の成長を阻む第二の要因は労働組合である。最も典型的な例は、ここでもサムスンである。サムスンは創業以来、社員への好待遇と引き換えに「無労組経営」を行ってきた。しかし、文政権になって、労組結成を妨害したとして幹部が逮捕され、労組が結成された。

 韓国で猛威を振るう労組として「民主労総(全国民主労働組合総連盟)」が挙げられる。民主労総は単なる労働問題への関与を超えて政治化、既得権益化している。現代自動車の労組は民主労総系であるが、ストがあるたびに闘士を現代に派遣し、ストを扇動(せんどう)する行為を繰り返している。

 民主労総はコロナ禍でソウルの都心で政府当局に禁止されたにも拘わらず、労働者大会を決行している。こうした労組の言いなりになり、ついにはそれが過激化しても抑えられない政府が韓国経済を無秩序化させている。

企業経営に
障害を与える過剰規制

 そして第三の要因は、企業経営にとって障害となる過剰規制である。

 政府与党は今年1月、重大災害処罰法を国会が通過させ、22年1月から施行されることになった。