政府は、労働災害を防止するためとしているが、曖昧な線引きとともに企業に大きな責任を負わせるものであり、事実上の操業時間短縮、コストアップにつながるほか、労災での死亡事故発生時には事業主や経営者が刑事処罰される内容も含まれる。同法の施行は多くの中小企業が法に触れる事態を招きかねない。

経済原則を無視した政策で
自営業者は存続の危機

 財閥系企業とは異なり、自営業者は廃業・倒産と背中合わせである。そうした中で新型コロナの感染が拡大し、韓国政府は社会的距離確保と称して、営業時間の短縮、飲食店等に入る人の人数制限などを行ってきたが、これに見合う支援や補償を行わなかった。これによって自営業はひん死の状態である。

 しかし、自営業者の困難はコロナ前から広がっていた。それは文政権が身の丈に合わない最低賃金を強要したからである。それにコロナが加わって、自営業者はその負担に耐えきれず廃業・倒産が増大している。

 今夏に行われたある調査によれば、今後廃業を考えているのは、39.4%に及ぶという。コロナ感染者が5000人を超え、連日過去最多を更新する現在において、自営業者の困難はそれよりも増しているだろう。

 自営業者の危機の根本的要因は、これまでの文政権の経済原則を無視した「所得主導成長」政策の失敗である。国民の所得を上げれば、消費も増え、経済は成長するというが、自営業者や中小企業にはそうした負担に耐える力はなく、雇用者の解雇、廃業に追い込まれ、国民間の格差は縮まるどころか広がった。

 そこにコロナが襲ったが、営業時間の短縮などに応じた店舗などへの補償・支援は他の先進国と比べ10分の1~20分の1の水準である。コロナ禍以降の1年6カ月で自営業者は66兆ウォン(約6兆3000億円)の負債を抱え込み、1日平均1000店、これまでの合計で45万店以上が閉店したという。

 文政権は弱者の味方を標榜したが、自らを救うことのできない弱者がますます困窮しているのが現状である。文在寅大統領は実態に合わない経済政策を導入しながら、それを支える労働生産性の向上などで環境を整備することもなく、単に上から目線で命令するだけで経済が動くはずがない。