生活の質の低下に
歯止めがかからない

 韓国経済は、国民1人当たりのGDPは世界十大経済大国の仲間入りを果たした。

 だが国民生活にはその実感は広がっていない。グローバル統計サイト「Numbeo」によると、2021年の韓国の「生活の質」指数は130.02となり、評価対象国83カ国中42位となった。2017年には67カ国中22位だったから、大きく悪化したことになる。

 生活の質低下の要因は、不動産価格の高騰と物価高とままならない就業機会である。ソウル市内の不動産価格は文政権の4年間で倍増した。文政権はこの間二十数回も大々的に不動産対策を発表しておきながら、上昇を抑えることができなかった。裕福な国民が次々に不動産転がしを行い、マネーゲーム化する中、さらにコロナ禍で行った金融緩和が火に油を注いだ。

 若者たちは追い込まれている。20~30代の人々を調査したところ「一生懸命働いても金持ちになれない」と答えた人が70.9%に上る。同時に69.5%は「希望する職場に就職する可能性は低い」、62.9%は「今後も若年層の雇用環境は悪化する」と答えている。

 文大統領は非正規雇用の公務員の正規化を主張し、仁川空港の非正規職を正規職に切り替えた。失業率も2.7%と0.9ポイント下落した。しかし、非正規職の割合は全体の38.4%であり、20~30代の30.1%(243万人)が非正規職である。その比率は60代よりも高い。

 しかも、15~29歳の若年層の勤務時間をコロナ前と比較すると、週36時間未満の労働者が10.3万人増加したのに対し、36時間以上は13.9万人減少。就業の質は確実に低下している。

 文政権は失業率の改善だけを取って就業状況はいいと自画自賛しているが、実態は極めて厳しく、これでは就業状況の改善効果は期待できないだろう。