<同社は富士吉田署への通報を「午後3時ごろ」としているが、同署は「連絡があったのは午後6時前」としており、食い違いが生じている。県への連絡は、警察が事故現場を調査した後の午後8時10分ごろ。同社は「事態をある程度把握してから報告しようとした」としている>(同上)

 筆者は企業危機管理を生業にしているが、このように「客」が負傷をした場合、ここまでのんびりと時間を使うケースは珍しい。怪我の程度にかかわらず、警察・行政への報告は速やかに行っておくというのが事故発生時の鉄則だからだ。

 このような「行政軽視カルチャー」は他の事案からもうかがえる。「エキスポランド」の悲劇を受けて、国が行なった緊急実態調査の結果、2004年10月、ハイランドの「マッドハウス」というコースターを点検していた男性従業員に別のコースターが衝突し、重症を負った事故を県に報告していないことが明らかになったのだ。

<総務省行政評価局によると、ハイランド側は事故を労災事故と判断。富士吉田署などに報告したものの、県には届け出なかった>(読売新聞2007年10月17日)

 このような話を聞くと、「堀内王国」の人々は、「さっきからハイランドがずさんな安全管理をしているような印象を与える悪い話ばかり。さてはこいつも長崎知事にカネをもらっているに違いない」と思うかもしれないが、まったく逆だ。このように県への報告を怠るのは、「富士急ハイランドがアトラクションの安全管理を徹底している」ことの裏返しだと筆者は考えている。