格差是正を目指す岸田政権が
「給与総額」を軸に制度設計する事情

 さて、こういう記事を書いていると、「脱法行為を推奨するのか? けしからん」とお感じの読者もいらっしゃると思います。私の意図は逆です。これから先、税制が法制化する中の政治的綱引きで、必ずザル法制にして抜け穴を作ろうとする動きが出てきます。それをこういった記事でけん制したいのです。

 岸田総理が本当に実現したいのは、格差の是正です。だったら本来は「給与の総額」を軸に制度設計をするのはおかしいわけです。総額や平均値を上げるのではなく、給与の中央値や最頻値を増やさなければ政策は達成したことにはなりません。

 しかし、実際の資本主義社会では、「給料の中央値や最頻値の増額」は、どの先進国においても解決できていない難題です。

 ではどうするか? 官僚や与党にとってのインセンティブとしては、効果が出ているように見える結果が出る数字を選択することになります。

 以前の安倍内閣で、日本経済を上向かせる指標として平均賃金の上昇を重視したときがありました。このときは、いつの間にか指標が「名目賃金」に設定されるという現象が起きました。実質賃金は下がり、国民は困窮しているにもかかわらず、政府は「名目賃金は上昇しています」と国会答弁を繰り返すようになったのです。

 これが、官僚にとっては非常に重要でかつ、官邸にとってもメリットがあるのです。政府の統計上の「給与総額」が上昇していれば「賃上げ税制は効果があった」と言えるようにルールを設定するとどうなるか?がポイントなのですが、実はこれが達成できる可能性が高いのです。