「日本だけではなく、みんなの問題」、西欧も気づいた

――かつて西欧諸国は、中国が主張する南シナ海の管轄権や人工島の建設などの問題に対して、あまり関心を持っていなかったように感じます。

 日本は以前から西欧諸国に対し、「中国が南シナ海でやっていることは危険だ」と訴えてきましたが、中国は遠い国ということもあり、当時は「それは自分たちの問題ではなく、日本の問題」だとしてきました。しかし、ここ2~3年前から西欧諸国の考え方は確かに変化しました。それは習政権の中国が続けば国際法の意味が薄くなってしまうことに気づいたからです。

 オランダ・ハーグの国際仲裁裁判所が2016年に、「南シナ海で中国が主権を主張する独自の境界線『九段線』に国際法上の根拠はない」と判決を下しても、中国がこれを「一枚の紙きれ」だとして受け入れなかったことはその好例です。

 南シナ海のみならず、貿易制度、人権問題などさまざまな面において、「習政権の中国は危ない」と考え直し、これらの問題は実際のところ「日本だけではなく、みんなの問題」だったことに気づいたのだと思います。

中国の電気自動車はヨーロッパ市場で拡大するか

――中国企業が関心を向ける欧州市場についての質問です。中国の電気自動車(EV)は今後、ヨーロッパ市場への輸出を加速させるのでしょうか。2021年9月のミュンヘンモーターショーでは、欧州メーカーが環境重視のEVを展示したのと対照的に、中国メーカーはテクノロジーを駆使したEVを披露しました。欧州の消費者は中国のEVを受け入れるでしょうか。

 中国の技術とEVは、技術の観点からだけでなく、「知的財産の侵害や強制労働(ウイグル人労働者)によって生産された可能性のある技術」という独裁主義国家の観点からも、大きな懸念があると思います。