私の感覚では、中国がEVの輸出で成功するかどうかの最初の決定要因は、コスト、洗練度、そして電気自動車がEU消費者の需要と好みを満たすのに十分なローカライズが条件になってくると思います。むしろ中国は、ハンガリーのように緊密な関係にある東ヨーロッパやポーランドなどで、成功を収める可能性があるといえるでしょう。

 欧州の消費者にとって、中国政府の中国内や域内での態度は微妙な影を落とします。ウイグル人に対する人権侵害の継続、香港における一国二制度の侵食、台湾に対する好戦性の高まりは、ドイツ人やヨーロッパ人が今後、中国市場や中国製品を受け入れるかどうかに大いに関連付けられるでしょう。中国が国内外でより独断的な行動を取り続けると、欧米やドイツの消費者は、中国のEVだけでなく他の製品についても購入を他国のものにシフトさせる可能性があります。

「ドイツの住宅は中国人にニーズがある」、その理由とは

――住宅価格が世界的に高騰しています。スイス最大の銀行UBSが今年10月に発表した指数(UBS Global Real Estate Bubble Index)では、ドイツのフランクフルトが世界で最もバブルリスクが高い都市とされました。ドイツ主要紙は「ドイツの住宅は中国人にニーズがある」と報道しているようですが、中国の政治的原因から来る資産移転が進んでいるのでしょうか。

 フランクフルトだけでなく、ヨーロッパや北アメリカの他の都市の住宅価格の高騰は、習近平が打ち出したいわゆる「共同富裕」路線と無関係ではなく、中国人の国内資産の海外移転に部分的に関連していると思われます。

 そうはいっても、コロナ禍における安定性を求めた投資は、住宅価格の高騰の主要な推進力になっていると思います。ドイツ国内では小さな家での都市生活の限界から、在宅勤務により適した物件を探す個人が増えている点、また世界市場で見た場合は、経済の不安定期には安定した地域や領域の投資を志向している投資家が増えている点が挙げられます。

 安定性とは、優れた制度、法の支配、および経済市場における広範な安定性を意味します。ドイツの住宅価格の高騰は、ドイツがこれらの基準に適合していることの証左であり、安定的な資産運用の対象である不動産を中心に資金が流入しています。

 中国政府は少なくとも2015年以降、中国からの資本流出を食い止めるために規制を強化してきました。それでも、事前に香港にプールさせた資金を移転させるなどして、中国人富裕層が海外で住宅を買うことは可能です。香港では国家安全維持法が適用されてから海外への資産移転が進みましたが、フランクフルトなどの不動産市場の一部には、香港や大陸からの資金が入り込んでいる可能性もあります。

――最後の質問です。米バイデン政権は2022年2月の北京冬季五輪に選手団以外の外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を発表しましたが、ドイツやEUも足並みをそろえますか。

 ドイツやEU諸国がボイコットを選択する可能性はありますが、それ以前に中国入国時に3週間の隔離政策があるので、外交使節団がセレモニーに出席するのは現実的ではありません。日本や韓国あるいは東南アジアの国々は何らかの形で外交使節団を送るかもしれませんが、豪、英、カナダ、ニュージーランドはすでに米国に追随、ドイツ、フランスなどEU諸国もセレモニーや大会に参加しない公算が大きいのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

*インタビューは12月7日に行いました。