株式レポート
12月5日 18時0分
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マスコミの本音〜日銀資産は「膨張」しているのか?〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

本日(12月5日)の日経新聞には、「日銀資産、膨張進む 7年ぶり最高更新156兆円」という記事が掲載されている。これまでの、日銀による国債買入れなどの金融緩和策によって、2008年末以降日銀の資産規模は増え続けている(グラフ参照)。


ゼロ金利下での金融緩和策では、貨幣(マネー)の価値を直接薄める手段が使われる。市場に供給するマネーを増やすために、中央銀行の資産規模が増えるのは当然である。ところで気になるのは、記事の中で、日銀の資産が「膨張している」というフレーズが使われていることだ。

「膨張」という言葉に込めるニュアンスは人それぞれかもしれないが、例えば「予算が膨張する」など、好ましくないのに増える場面で使われることが多い。つまり、これまでの金融緩和策によって、「日銀資産が好ましくない形で増えている」という本音を、記事の書き手が抱いていると推察される。

ただ、本当にそうなのか?日銀の資産が過去最高水準を上回っているから、「膨張」しているのか?そもそも、リーマンショック後に、再びデフレに陥っているのは日本だけで、未だにそこから抜け出す兆しは見えない。素直に考えれば、金融緩和策が不十分だった可能性をまず考えるのが普通だろう。

むしろ、リーマンショックや東日本大震災という、極めて大きな経済ショックに見舞われても、日銀の資産は、前回の量的金融緩和期(2001〜05年)の最高水準まで増えなかった、と言うこともできる。先述のグラフが示すように2006年以降の金融引締めで、日銀の資産は50兆円減少したが、減った分を4年かけて取り戻しただけである。

政府は名目GDP3%の成長を目標に掲げている。その経済成長に沿う形で、中央銀行が資産を増やすのが、通常の政策対応である。3%の名目経済成長に必要な資金供給を、日本銀行は実行してきたのか?こうした観点で、2008年末からの、金融緩和策が十分だったかどうか検討される必要があるだろう。

それを考える上で、米欧の中央銀行がリーマンショク後に、どれくらい資産規模を増やしたのかが一つの判断材料になる。グラフでは、2008年初を起点に、米日欧の中央銀行の資産規模を比較しているが、米欧の中央銀行の資産の増え方が圧倒的に大きいことは明らかである。


こうした視点でみると、日銀による金融緩和が十分だったとは言えない。日銀の資産規模は、本当に「膨張」しているのか?客観的な事実を踏まえた、感情に囚われない冷静な議論が必要だ。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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