若者の良質な雇用の減少が
出生率を低下させた

 韓国の若者の雇用の現状は悲惨である。これを認めないのは文大統領とその周辺くらいであろう。文大統領は、財政支出で高齢者向けの短期アルバイトを増やすことで、見かけ上の失業率は低く抑え、その数字をもとに韓国経済の就業状況は良好であると発言している。

 しかし、今年だけで非正規職が64万人増加するなど、雇用が改善したとは到底いえる状況ではない。

 青年失業率は5.4%と昨年より3.5ポイント改善している。しかし、これは数字のトリックにすぎない。就業者の内訳を見ると、20~30代の30.1%(243万人)が非正規職であり、その比率は60代よりも高い。しかも若年層の勤務時間を2年前と比較すると、週36時間に満たない人が10.3万人増加する一方、36時間以上の人は13.9万人減少している。

 この間、良質な製造業の雇用は減少している。それは反企業的な文政権の政策が原因であり、その代表例が、最低賃金の無計画な大幅引き上げ、規制改革と労働組合寄りの労働政策である。あまりにも労働組合の力が強くなり、不況時にも解雇できないこと、賃金の上昇幅が大きいことが良質な雇用減少の大きな要因である。

 さらに、文大統領の政権与党は重大災害処罰法を制定した。これは労働災害を防止するためとしているが、あいまいな労働災害の線引きとともに企業に過重な責任を負わせるもので、事実上の操業時間減、コストアップにつながるものである。さらに労災事故発生時には、事業主や経営責任者が刑事処罰される内容も含まれている。これでは新しく製造業を始めようとする人々もちゅうちょするであろうし、企業の海外進出を助長するであろう。

非正規労働者の増加による
晩婚化で出生率が低下

 韓国の30代の人々の未婚比率は2010年が女性20.4%、男性37.9%であったが、2020年には女性33.6%、男性50.8%と大幅に増えている。それは初婚年齢の高まりを反映しており、2020年の初婚年齢は男性33.4歳、女性30.8歳と、20年前と比較して男性で3.9歳、女性で4.3歳高まっている。

 晩婚化の原因については、適当な相手と巡り合う機会にめぐまれないことが33.8%と高い。

 所得や持ち家などの経済的な基盤がしっかりしていない男性が、結婚相手を探すのは難しい。文政権は非正規職を正規職に格上げすることを公約して大統領になったが、逆に非正規職が増えているのが現実であり、それが結婚の障害となっている。

 ちなみに、30代男性の正規職労働者の未婚率は44.3%であるのに対し、非正規職の場合には53.7%と半分以上が未婚である。