『全裸監督』は「ローカルANDグローバル」に成功した作品

 では、ネットフリックス流の「ローカルANDグローバル」とは何か。ローカル市場とグローバル市場の両方を同時に見据えて作るのが「ローカルANDグローバル」の基本形。これは190ヵ国・地域、全世界同時配信を実現するプラットフォームを持つネットフリックスならではの戦略なのである。時間をかけて、海外進出を探り、セールスし、放送にこぎつけるまでしなくとも、棚に並べた瞬間に世界のネットフリックス会員が視聴できる仕組みを作ったのだ。

 ネットの時代はSNS上で発信すれば、全世界のユーザーに届くことが当たり前。番組コンテンツをネットで届けることそのものはYouTubeが先行していたが、それをネット上で定額制サービスのビジネスとして成立させた功績は大きい。ネットフリックスは市場のニーズを見据え、先見の明があったことに尽きる。だが、仕組みだけでなく、コンテンツ戦略のポリシーが「ローカルANDグローバル」にあることが成功の大きな要因だ。

 マーケティング力、それを実現させるための資金力、そして圧倒的な力を見せつけるプロモーション力を戦略に集約させることは理想的ではある。そんな能力にもネットフリックスは長けているのだろう。だが、「ローカルANDグローバル」は既存の概念を覆す戦略であった。番組コンテンツの多言語、多様性を進めていくことに、ある意味ポリシーすら持っていたに違いない。

『全裸監督』とは、そんな戦略とポリシーがあった上で生まれた作品である。ネットフリックスが日本に上陸して、『全裸監督』の成功までに4年の月日を要したが、その道のりを作品ごとに振り返ることで、動画配信覇者ネットフリックスの素顔を垣間見ることができる。