過去の尖閣諸島問題で壊れかけた関係を補強するために必要なこと

 尖閣諸島(中国名は釣魚島)の国有化問題が発生した2012年の夏に、「『中日関係』という建築物に耐震工事を」という論考を、月刊誌「世界」(2012年10月号)に書いた。そのなかで、私は次のように呼びかけた。

「日中国交正常化の実現に漕ぎ着いた1972年に、当時の建築基準に基づいて『中日関係』ビルを竣工させた。しかし、このビルは何度もの政治的な嵐と地震に震撼させられ、壁のひび割れや基礎の動揺などの現象が見られた。ビルの安全性を脅かすこうした問題を取り除くために、耐震構造の追加工事や修繕工事を行わなければならない」

 その「耐震補強工事」の具体的な内容として、私は次のように提案した。

(1) 人的交流の強化。特に日中の未来をつなぐ青少年の交流に力を入れるべきである。
(2) 経済交流だけではなく、文化交流の強化も必要である。
(3) 「すべての紛争を平和的手段により解決する」という原則の貫徹。

 先日、日中友好団体から原稿依頼があり、私はあらためてこの提案に触れた。そこで「特に強調したいのは、(1)と(2)において、交流の内容や形式を、若者の心を惹(ひ)きつけられるように工夫すべきだ。Zoom会議などの導入、課題の設定など、今日的な要素をいろいろと取り入れるべきだと思う」といった内容を追加した。

 うれしいことに、周りを見ると、私のこうした提案にまるで呼応するかのような動きがいくつも出てきている。