「あれもこれもやらなくては」という
状況に陥っている人に

『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版)
著者:グレッグ ・マキューン(著)、 高橋璃子(翻訳)

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』
著者:グレッグ マキューン(著)、高橋璃子(翻訳)
出版社:かんき出版

「より少なく、しかしより良く(weniger, aber besser)」とは、ドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスが語ったデザイン哲学です。

 本書は、本質的なことに力を集中させて最大の成果を得ることの重要性とその方法が体系的に記されています。ただ、本書がハウツー本にとどまらないのは、エッセンシャル思考が「自分の選択を自分の手に取り戻す道のり」である点にあります。

 私自身、やりたいことがたくさんあっていろいろと手を伸ばした結果、「あれもこれもやらなくては」と選択できる余地が少なくなり、消耗したことがありました。そこで本書を読んで当時取り組んでいたことを挙げてみて、その数を減らしました。その後、メインのプロジェクトにきちんと時間を割けたとき、あらためて自ら考え、選択できることにおもしろみと価値があることを実感しました。

 また、プロジェクトマネジメントの観点からも、本質的な部分を見極め、資源を集中させるエッセンシャル思考の重要性を、日々感じています。「何となく振り回されているな」と感じるときに、自身の選択の主導権を取り戻して前に進むために、何度でも読みたくなる本です。(UXデザイナー 山根圭太)

『観察の練習』(NUMABOOKS)
著者:菅俊一

観察の練習『観察の練習』
著者:菅俊一
出版社名:NUMABOOKS

 平らに見える歩道の正体、きちんと並べられたゴミ、弁当に付けられたソースの描く軌跡……。

 本書は、ありふれた日常の場面で出くわす小さな気付きと違和感を収集し、「写真+読み解く思考」の形で考察を述べた事例集です。ページをめくって、自分の見解と著者の観察内容との違いを知ることで、新たな気付きや面白いアイデアが生まれてきます。普段は気にならなかった身の回りの物事も、視点を変えると工夫やアイデアであふれています。

 クリエティブやものづくりの領域で活動している人はもちろん、世の中にある気付かれていない工夫や行為、秩序に興味のある人にもおすすめです。(UIデザイナー 楊霈塬)

『行動を変えるデザイン』(オライリー・ジャパン)
著者:スティーブン・ウェンデル

行動を変えるデザイン『行動を変えるデザイン』
著者:スティーブン・ウェンデル
出版社:オライリー・ジャパン

 行動経済学、心理学、社会学が、商品開発やソフトウエアデザインにおいて重要であることは、多くの人に理解されていることでしょう。とくに行動経済学は、消費財の開発、認知心理学、UI(ユーザー・インターフェイス)デザイン領域において、実践に用いられています。一方で、プロダクトをユーザーにどのように使ってもらうかという行動変容のしくみに関しては、まだまだ理論と実践に乖離(かいり)があるように思われます。

 本書は、人の行動変容に着目したプロダクト開発の理論と実践を学ぶことができる本です。生活の中でユーザーにプロダクトをどう想起させ、使い続けてもらうしくみを作るかに焦点を当てて企画から開発までの具体的な方法と実践例がまとめられています。

 UXデザイナーとしてユーザー体験を考える上で、プロダクトの開発とユーザー体験は、切っても切れない関係にあります。プロダクトをデザインする上で行動変容の条件を満たしているか、ユーザーに思い通りにプロダクトを使ってもらうには何が必要か、こうしたことを確認する上で、本書は大いに役立っています。プロダクト開発に携わる方はもちろん、心理学や行動経済学がどのように実践されているか気になる方は、ぜひ手にとって読んでみてください。(UXデザイナー 水野有稀)