新規開通した都市交通に乗ってみる

MRTバーンスー駅から国鉄バーンスー・グランド駅への連絡通路MRTバーンスー駅から国鉄バーンスー・グランド駅への連絡通路

 2020年2月の取材を最後に訪れられずにいた間に、バンコクと近郊を結ぶ都市交通が3路線開業し、利便性が高まりました。鉄分高めの筆者は、もちろん試乗してきました。

 長年タイを代表するターミナル駅だったフアラムポーン駅に代わり、間もなく開業するバーンスー・グランド駅。地上3階地下1階、ホーム数26面の巨大な駅です。ここから北と西の郊外を結んで運行しているのが、SRTダークレッドラインとSRTライトレッドラインです。

 バンコク市街からバーンスー・グランド駅までのアクセスはMRTブルーライン。地下にあるMRTバーンスー駅から案内看板に従って通路を進むと、スムースにバーンスー・グランド駅の巨大な1階ホールに上がることができました。ところが、そこから先の詳しい構内案内が見当たらず、乗り場がわかりません。うろうろしていたら改札があったので、そこにいた警備員に尋ねてみました。

筆「すみません。切符売り場はどこですか」

警「どこへ行くのですか?」

 どこへ行こうなどとは考えておらず、終点まで行くだけのつもりなので、行き先を聞かれてもとっさに駅名が出ません。

筆「試しに乗ってみようかと……」

警「どこまでですか?」

 去年バンコク編の改訂で交通図を作り直した際作成した原稿を思い出し、終点の駅はなんだっけ……終点の駅は……

筆「タリンチャン! タリンチャンです!」

警「ではこちらへ」

 警備員は先に立って歩き出し、少し離れた切符の自動販売機まで連れて行ってくれました。そこには国鉄の職員がいて、自動販売機の使い方をレクチャーしながら操作してくれ、無事切符(コイン型のトークン)をゲット。その職員さんに「あちらの改札から入って下さい」と言われて戻っていくと、先程の警備員がまた不案内そうな日本人らしき女性を連れて歩いてくるのとすれ違ってお互い笑ってしまいました。わかりやすい案内出しましょうよ。

ダークとライト両レッドラインの車両は日立製作所製ダークとライト両レッドラインの車両は日立製作所製

 タリンチャンはSRTライトレッドラインの終点。途中のバーンバムルー駅は、これまで陸の孤島のような場所だったアーティスティックなマーケット、チャーンチュイの最寄り駅となります。SRTダークレッドラインの終点はランシット。そのふたつ手前のドーン・ムアン駅はドーン・ムアン国際空港ターミナルビルと歩道橋で連絡しています。これにより、ドーン・ムアン国際空港から公共交通のみでバンコク市内まで出られるようになり、とても便利になりました。ちなみにドーン・ムアン~バーンスー・グランド間の運賃は33バーツです。

もうひとつの新路線は全自動無人運転のBTSゴールドラインもうひとつの新路線は全自動無人運転のBTSゴールドライン

 こちらも新しく運転を開始したBTSゴールドラインは、BTSシーロムラインのクルン・トンブリー駅とクローン・サーン駅を結ぶ新交通システム。全線高架、ガイドレールの案内軌道をまたいでタイヤで走行する、2両編成の比較的小さな車両です。無人運転なので運転席がなく、最前部に乗車すればパノラマが楽しめる構造。駅はクルン・トンブリー、チャルーン・ナコーン、クローン・サーンの3駅。チャルーン・ナコーン駅は高島屋も入る巨大ショッピングモールのアイコン・サヤームと連絡しています。始発駅のクルン・トンブリーから乗車したところ、乗り合わせた乗客は全員チャルーン・ナコーンで下車してしまい、終点のクローン・サーンまで乗り通したのは筆者のみでした。改札から出る前に念の為駅付近の案内地図をぽつねんと眺めていたところ、オフィスから駅の職員が心配げな表情で出てきました。