中国経済の急減速リスクには要注意

 中国の不動産バブルが崩壊するという話は10年以上前からずっと聞かされてきたが、もしかするとおおかみ少年ではなく、今度こそ本当に起こるかもしれない。中国では、多くの不動産開発企業が資金繰りに問題を抱えている。中国政府は不動産価格を抑制しなくてはならず、難しいかじ取りを迫られているようだ。

 筆者が今一つ気になっているのは、最近の中国政府が経済発展よりも共産党政権の安定を優先しているようにみえることで、しかもその手段が乱暴であることだ。

 例えば「富裕層に重税を課し、税収を貧しい人に配ることで社会を安定させる」というのであれば、問題は軽微であろう。人々は「重税を課されても残りが巨額になるくらい、大いに稼ごう」と頑張るからだ。

 しかし、あるとき突然に「お前のビジネスは共産党政権を危険にさらす」との理由で禁止されたり、懲罰的な制裁を受けたりすると、人々が萎縮して起業家精神を発揮するインセンティブを失ってしまいかねない。

 中国政府は、貧富の格差是正と経済発展のバランスに苦心しているようだ。もし中国の人々が疑心暗鬼に陥って起業家精神がなえてしまえば経済は発展せず、「皆が等しく貧しい社会」ができ上がってしまうこともないとは言い切れない。

 以上のことから、2022年の中国経済は、不動産バブル崩壊と起業家たちのインセンティブ喪失による経済失速という2つのリスクを抱えることになりそうだ。

 内需が弱く、インバウンドにも頼れない日本経済にとっては、輸出が頼りである。しかし、最大の輸出相手国である中国経済が失速すれば、深刻な不況を招きかねない。来年を考える際の大きなリスクとして留意しておきたい。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。