インバウンドの穴埋めは難しい
スイートルームは高稼働率

 今はいかに国内のお客さまに泊まっていただくか、注力しています。しかしながら、インバウンドのお客さまをカバーできるだけの国内のお客さまの需要が、都心部のホテルマーケットにはない印象です。

 基本的には都心にお住まいの方が、週末利用あるいはステイケーション(近場で休日を過ごす旅行スタイル)で、ホテルでゆっくりされます。それにしても、インバウンドの穴埋めをするほどの需要はない。企業の出張もまだ制限されていますし。宿泊にリベンジ消費が起きている感はないですね。

 唯一あるのは、通常の部屋と比べると、スイートルームの稼働率が高いことです。コロナ禍になって、あちこち観光するというよりもホテル滞在を旅の目的にする人が増えました。お客さまのホテル滞在時間がものすごく長くなったのが、何よりも大きな変化です。

吉原大介・パレスホテル代表取締役社長よしはら・だいすけ/1978年、東京都生まれ。2000年慶應義塾大学法学部を卒業。11年パレスホテルに入社。セールス&マーケティング部、経理部を経て、16年に米国コーネル大学大学院を修了。同年パレスホテル東京副総支配人に就任し、17年に経営企画室長および取締役に就任。18年から常務取締役、20年3月から現職。 Photo by T.U.

 そういった背景もあり、既存の客室を一部改装してスイートルームを増設しました。広さ90平方メートルの「プレミアスイート」を新しく6部屋造ったことで、スイートルームが18室に増えました。

 実はもともと、全客室数290のうちスイートルームが12室だけでは足りず、海外の富裕層を取り逃がしていたという課題があったんです。コロナ禍が収束したら、そこはしっかり取っていきたい。

――ちなみに、コロナ禍をしのぐために、帝国ホテルがやっているような長期滞在ができるサービスアパートメント事業は、始めないのですか。

 帝国さんやニューオータニさんは1000室規模のホテルです。われわれは客室数が少なく、週末や年末年始は8割ぐらいの稼働率になります。この客室数に対しては、サービスアパートメントは難しいですね。

>>後編『パレスホテルは競争力をどのように維持する?社長が自ら実践することとは>』に続く

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