平石アナひらいし・なおゆき/テレビ朝日アナウンサー。1974年生まれ、佐賀県鹿島市育ち。早稲田大学政治経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。報道・情報番組を中心に「地球まるごとTV」や「ニュースステーション」などでMCやフィールドリポーターを務め、全国各地を取材。04年から1年間、ニューヨーク支局に勤務。19年からABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当している。

平石 その場合は、ゲストが立場を変えてきたこと自体が、一つのネタになると思っています。ゲストの新しい側面は、ある意味で鮮度の高い情報です。それなら、下調べした情報はいったん保留し、出演者のその場のナマの声から面白さをどう見いだすかに注力した方がいい。

 ひろゆきさんが出演される回に関しては、ひろゆきさんとゲストの1on1がうまくいくよう意識しています。ひろゆきさんは、一対一のやりとりで相手の本質にグッと切り込むじゃないですか。それは見ていて痛快だし、視聴者が求めることでもある。ツッコミが鋭すぎてひやひやすることもありますが(笑)。

平石アナがうなるひろゆきの質問力
「答えが想像できる質問はしない」

――ひろゆきさんの鋭いツッコミという話がありましたが、ひろゆきさんご自身はどう語れば視聴者に刺さるか、意識して発言されているんですか?

ひろゆき 最初に結論を言って、短く説明するようにしています。この文法だと話は端的になります。といっても、僕は昔からこういうしゃべり方だったんですけどね(笑)。番組では一人が話せる時間に限りがあるので、僕は15秒くらいで言いたいこととその理由を話すようにしています。

平石 ひろゆきさんって、とにかく話の核心に迫るスピードが速いんです。「それってどういうことですか?」「ちゃんと答えてますか?」「答えたくないんですか?」といった率直な質問で相手の心中をあぶり出していく。ゲストの話がテーマからズレた場合も、ひろゆきさんはそれを見逃しません。

――平石さんがおっしゃるように、ひろゆきさんは本質を突く質問をされますよね。そうした「質問力」はどうやって高めているのでしょうか?

ひろゆきが断言、日本はどんどん安い国になって「アフリカ化」していくひろゆき/本名:西村博之。1976年生まれ。中央大学在学中に米国留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し「ニコニコ動画」を開始。15年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。著書『1%の努力』(ダイヤモンド社)が今、38万部を突破している。 Photo by Tomoaki Sakaki

ひろゆき 例えば、ゲストといろいろ話をしていると、「こう言ったらこう答えるだろうな」っていうパターンがある程度分かってくるんです。そうした答えが想像できる質問はしないようにしています。反対に、相手がどう答えるのか、分からないことを聞きますね。

平石 確かに、ひろゆきさんには無駄な質問がないです。だから素早く、テーマの本質にたどり着けるんだと思います。

ひろゆき 「和をもって貴しとなす」というのを人はやりがちじゃないですか。議論をしているときに「この問題は難しいよね」というような無難なこと、いわゆる“置きにいったコメント”をしてお茶を濁すというか。日本では割とそれが主流ですよね。

 そんな中でアベプラは、とがった意見を言う人も多いと思いますが、あまりクレームは来ないそうですね。平石さんがファシリテーションの面で意識されていることはあるんですか。

平石 議論の場から分断が生まれないように、というのは心掛けています。特に、組織を背負って出演されている方の場合、「絶対に負けてはならない」という戦闘モードで来られることがある。企業や団体のブランドがかかっていますから理解もできるのですが、それは分断を生じかねない構えでもあります。

 そこに、「お互いリスペクトしていきましょう」という前提を確認する場を設ければ、議論に対する姿勢が変わってきます。具体的には、「相手が何を考えているのか聞いてみましょう」「その上で、もしかしたらお互いが歩み寄れる点があるかもしれません」「そこを浮き彫りにする議論にしましょう」といったマインドを持って、出演者に質問するんです。そうするだけで本当に変わります。