「顔や髪をケアしても鏡がないと見られませんが、爪は常に視界に入りますから、きれいな状態の自爪を見るだけで気分が上向きます。実際にお客様で『自分の爪がきれいになったのがうれしくて、ずっと見てしまいます』『施術後の爪は、見るだけでテンションが上がります』といったメッセージを寄せてくれた人もいます」

 爪の状態はメンタルと関係する。それはプラス面もだが、マイナス面でも同じだ。

「メンタルが不安定になるとささくれをむしったり、爪をかんだり、爪の周りを攻撃してしまう人は少なくありません。しかし、爪の周囲を傷つけると見た目が痛々しくなるだけでなく、『どうせボロボロの状態だから』との諦念から余計に攻撃してしまう負のサイクルに陥ります」

 ネイルは、スポーツでのトラブルを未然に防ぐ効果もある。

「たとえば、足の爪の切り方が不適切なまま運動を続けると、爪の下に血がたまったり、深爪や巻き爪になったりする恐れもあります。スポーツやランニングが趣味のビジネスマンは、爪の切り方を見直すとトラブルの予防にもなると思います」

男性が通いやすい環境が整えば
利用者が増加する可能性も

 メリットが多いメンズネイルだが、日本ではまだまだ「ネイル=爪を飾ること」という認識が根強く、男性にはいまひとつ浸透していないようだ。

「アスリートは爪の切り方ひとつでパフォーマンスに差が出るので、ネイリストにケアを頼んでいる人も多くいます。私も2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは選手村へ行き、数々の選手のネイルケアに携わりました。海外選手が当たり前のように爪のケアをしている一方で、日本人選手の間ではそこまで重視されていないという印象を持ちましたね」

 海外では、爪が健康に大きく関係しているとの認識が広く知られており、男性も歯科医院に行く感覚でネイルサロンに通っているという。ネイルケアが競技の結果を左右しかねないほど重要なアスリートの世界でも、日本人男性の爪のケアが定着していない現状は、やはり、認識の遅れが原因なのだろうか。

「それもありますが、男性が気軽に足を運べるサロンが少ないことが利用のハードルを上げている気がします。男性向けコースを用意しているサロンでも、ネイリストや他のお客様が女性だと、気まずく感じる男性は多いようです」

 大石氏は「男性ネイリストが増え、他のお客様が気にならない座席のサロンが増えていけば、メンズネイルはトレンドになるかもしれない」と言う。

「来店されるお客様は、何かしら爪にコンプレックスを抱えている人がほとんどです。悩みは人それぞれですが、解消するまでには平均で半年前後は通っていただく必要があります。男性が通いやすいサロンが増えさえすれば、利用者は今以上に増えていくと思います」

 2022年は、爪の先まで洗練されている、デキるビジネスマンが増えていくのかもしれない。