最後に、電子取引の保存要件について、簡単に整理しておきましょう。

・自社開発した電子取引のシステムを使用する場合には、電子計算機処理システムの概要を記載した書類を保存すること
・パソコン、ディスプレー、プリンターを備え置いて、税務調査等の際に利用できるようにすること
・取引等の年月日、取引金額および取引先により検索ができるようにすること
・以下の4つのうちいずれかの方法で電磁的記録の真実性の確保を行うこと


1 タイムスタンプ付与後、取引情報の授受を行う
2 取引情報の授受後遅滞なく、タイムスタンプ付与ならびに保存関係者情報を保持する
3 訂正・削除が行えないまたは訂正・削除の履歴を保持する
4 正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規定を定め、運用する

 PDFファイルにした請求書が電子メールに添付されてくる場合やネットショップで会社の事務用品などを買った場合に領収書をダウンロードした場合などでは、上記1や2の真実性確保の方法は困難です。したがって、3の機能を有する保存システムを用意するか、検索可能性を考えつつ、4の規定の運用によって真実性の確保への努力の跡を残すといった方法を考えることになります。

対応がまずいと重加算税の可能性も?

 電子取引の義務については、義務化というだけでなく、電子取引データに複製や改ざんなどの行為があった場合、重加算税を10%分重くするという措置も入りました。電子取引の場合、オリジナルが電子データであり、複製・改ざんなどの証跡が残りにくいという特性があるためです。これは、スキャナ保存でも同様の加重規定があるのですが、従業員などが軽い気持ちで経費の二重精算などをしないように周知徹底する教育が必要となります。

 2年後に到来する電子取引の完全電子保存化に向けて、まずは、社内のさまざまな取引を見直して、思わぬ電子取引が行われていないかについて、洗い出しの作業からスタートすることが望まれます。そして、システム対応、従業員教育など、経理だけに任せておけばよいという話ではないことを認識しておきましょう。