子どもが独立したら、便利のよいコンパクトなマンションに移り住み、生活刷新をと考えるシニアが増えている。その時、古い自宅を売るか、貸すかという判断が生ずる。いずれを選ぶにせよ、まずは双方の現状と可能性をじっくり見てみよう。

家を売る

相場の7~8割でしか
買い取ってもらえない

「シニア住み替えの場合、持ち家を貸すという人より、売るという要望のほうが多い。しかし、現実には売れないで困っている人も少なくない。理由は築年数が経過しており、そのままだと古い印象が拭えないから。それでも売る場合、不動産業者の買い取りということになり、一般的な相場の7~8割程度に甘んじて売るしかないのが現状」と語るのは、不動産仲介透明化フォーラム代表の風戸裕樹氏。

 買い取られた中古物件は、リフォームやリノベーションが施され、見た目は新品同様の買取再販物件として市場に流通していく。ここで問題なのは、「売り手となるシニアの方々が、相場を知らないから、安く買い取りやすい相手と見られてしまうこと」(風戸氏)なのだ。

 昔は、一度買ったマイホームは「死ぬまで住む」のが常識だった。元気なアクティブシニアが増えて「生活を楽しむために」と住み替えを行うケースや、年金が少ないから生活資金を賄うべく「自宅を現金化」して生活縮減するケースなどは想定されていなかった。

 しかし、時代は大きく変化しつつある。シニア住み替えを行うなら、それなりに住宅市場の内情を学び、失敗しない住み替えに向けて、対策を練る必要がある。

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仲介会社選びは
大手に一日の長がある

 住宅評論家の櫻井幸雄氏は、50歳を過ぎた人の住宅選びには三つの特徴があるという。

「第1に、誰も新たにローンを組む気がないこと。第2に、焦って買う気もないこと。第3に、年を取ったら相手が“売れ残り”でも“再婚”でもかまわないことだ」(櫻井氏)

 この場合の売れ残りとは完成在庫、再婚とは中古物件を指す。要は内容を重視し、実質的な値引きやサービスの厚さを取る、ということになる。

 そして、売り方については「やはり大手の仲介会社が頼りになる」という。