アメリカ企業の目的は、もちろん利益を最大化し、株主にその利益を還元することである。ところが、そんな輝かしい目的が必ずしも歓迎できるものでないことは、誰もが痛いほど承知している。

 四半期ごとの売り上げを大きく見せかけるために、めんどうなやりくりをし、視野は短期的。コストを安く抑えるために賃金を減らし、安物の材料を使い、製造は労賃の安い中国などにアウトソースする。そしてそこでは、ひどい労働環境で工員たちを締め上げる。

 一方、そうした方法で利益を上げた企業では、成功報酬としてトップがヒラ社員の何百倍もの給与を受け取るのが常。そんな金持ちの金を預かる金融業界は、妙な金融商品を作ってさらに仲間内だけで潤い、だまされた普通の人々はコツコツと貯めて買った持ち家まで取り上げられてしまう。

 最近アメリカで起こったのは、かいつまんで言えばこんなことである。本来アメリカが標榜する資本主義は、起業精神とビジネスに燃えた人々が活路を開いて成功を収めることによって、その富が社会全体に分配されるということだったはずなのだが、現在のアメリカは「強欲」にすっかり打ちのめされている状態だ。

 そんな中で、アメリカで「ベネフィット・コーポレーション」という企業カテゴリーを法律として制定する動きが出ている。現在、ニューヨーク州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ペンシルバニア州などの11州ですでに法が成立し、14州が手続きに入っている。

 このベネフィット・コーポレーションは、営利企業でありながら、その目的は社会や環境問題の解決に貢献するという存在である。つまり社会的貢献を企業の存在自体の中に盛り込もうというものだ。ベネフィット(公益)を受けるのは、社員、顧客、環境、そして社会全般だ。