言葉のキャッチボールの2大ルール
――絶対外せない「わかる」と「快適感」
私たちの思いは記号になって相手に伝わっていきます。
例えば、「リンゴをください」。「リンゴ」という言葉(言語学における記号シニフィアン)にするのが、記号化(エンコード)の作業です。受け取った相手はこれを解読(デコード)します。
言葉で言わずに絵で示すこともあります。これも記号化です。オリンピックのピクトグラムは、絵なのに動きまで伝わって素晴らしい記号化の例でしょう。
ところがここには、可能性と共に大きな限界があります。送った人がある単語を使ったとして、受け取った人がその単語の意味がわからなければ、メッセージが伝わらないことです。
もともと、人間関係、relationという言葉の語源は、re(再び)とlatio(運び来る)です。発信者が運び出しても相手が受け取ってまた返してくれないと、人間関係づくりにはなりません。
そのためには相手が「わかる」と言う条件が必要です。しかも「四苦八苦わかる」というレベルでは面倒くさくて、わかりたいという気分になりませんから、「スッキリわかる」必要があります。スッキリわかれば、「この会話が快適だ」という快感を味わうことができます。これで会話のキャッチボールは成功です。
相手の言語・知的文化能力をあらかじめ確認する
キャッチボールが成立するためには、まず使う言語の問題をチェックしましょう。 例えば東京都の小池百合子知事は庶民が知らない英語交じりの言葉をつかうのが好きですが、あまり通じなければ「It's Greek to me(それはまったく僕にはギリシア語だ) 」。つまり「ちんぷんかんぷん」となるだけで、話した本人の自己満足にすぎません。
また、使う言語は同じでも相手の理解力のレベルが違うと、「言ったつもり」「聞いてな い」などというやりとりも起きがちです。間違いない記号化と解読には、相手の言語や知的文化的能力がほぼ同じであることの確認が必要です。話をする前にそこだけはきちんと知っておきましょう。さもないと、時間をいくら使っても相手に響かないという悩ましい結果になります。