農業を魅力ある産業とする際に期待されるのが農業法人化だ。農業経営には栽培、販売、管理、経理等、多岐に亘る仕事があり、従来の家族経営の農家では、一人で何役もこなす必要があった。農業法人という受け皿が整えば、様々な経歴を持つプロフェッショナルが集まって農業に参画する仕組みが整い、日本の農業が「儲かるビジネス」へと変わっていく。

多分野のプロが集まり
農業のビジネス化を促す

 近年、法人として農業を営む農業法人(注1)は増加を続け、日本農業の重要な担い手となり始めている。農林水産省データによると、2011年度末の農業法人は1万4000近くに上っている。今回は農業の法人化がどのような効用を発揮しているかについて検証していきたい。

 農業法人化は「儲かる農業モデル」の確立に、一番適したスタイルだと筆者は考える。

 中でも一番重要なのが、多様な人材が参画することによる相乗効果だ。従来の家族経営の農家では、一人で栽培、販売、管理、経理等、何役もこなす必要があった。いかに優秀な農業者でも、すべての分野でプロフェッショナルな成果を挙げることは不可能だ。そのため、いくつかの機能を農協にアウトソーシングすることとなった。結果として、自前の販売ルート開拓や新商品開発といった創意工夫が削がれるという一面が生まれたのではないか。

 いま、能力の高い若手、中堅層が数多く農業分野に飛び込んでいる。その主たる受け皿が農業法人だ。栽培を担当する者だけでなく、大学や前職での専門性を生かし、営業・企画・管理・技術開発等の専門家として成果をあげている。技術開発を重んじる大手農業法人では、大学院の修士、博士号を持つものもいるほどだ。

(注1)農業法人は法的に定められた名称ではなく、組織形態として農事組合法人と会社法人の2種に分かれている。注目度の高い異業種からの農業参入(2010年以降で1000法人強)は後者に当たる。会社法人にも、有限会社、合名会社、株式会社等があり、ひとえに農業法人といっても多様な形態があることは意外と知られていない。